間取りコラム3
いろんな冷たい視線を潜り抜け、はじまりますよっと。

room03 ドアを開いて
息子の拓真が部屋から出なくなって1年になろうとしている。
14歳の誕生日の日、彼はひどくボロボロの格好で帰ってきた。
「どうしたの?何があったの?」
と問いかける私に対して、彼は何も言わず玄関を出て、離れの自室に入っていった。それ以降、拓真は部屋から出なくなった。
後日、近所に住む同級生の女の子に聞いた所、拓真は数ヶ月前からいじめられていたらしい。優しくて親思いの子だ。私たちに打ち明けることが出来なかったのだろう。母親として息子の異変に気づいてあげられなかった自分に腹が立ち、泣き暮れる日々が続いた。
最初はドアの外から毎日のように話しかけていたが、返事が返ってくることはなかった。食事は昼と夜の1日2回。ドアの前に置いておくと、きっちり1時間後には空の食器が外に置かれてある。トイレやお風呂は、私たちが留守の間を見計らって済ませているようだ。いつからかそんな毎日が当たり前になってしまい、私も夫も彼の顔を見えないことになんら疑問を感じなくなり、ただ月日だけが過ぎていった。
いつものように夕食の買い物に出かけて、やけに商店街がにぎやかなことに気づいた。
「ああ、そうか今日はクリスマスなのね…」
思わずつぶやいたとき、ふと我に返った。そう、今日はクリスマスでもあり、拓真の誕生日でもある。1年。もう1年、私は拓真の顔を見ていない。声も聞いていない。余りにも空虚な日々を過ごしていたせいで、心が空っぽになっていた。いったい、何をしているのだろう。私はあの子の母親なのに! せき止めていた水が一気の流れ出るように、体の中を血が巡った。駅前の古びたケーキショップでサンタクロースの砂糖菓子がのったイチゴのショートケーキを、いつも立ち寄る精肉店で「本日限り!」とシールが張られたローストビーフを買い、急いで家に帰った。すると、リビングにはいつもより早く仕事を終えた夫がいた。手には去年拓真に渡せなかったゲームソフトが入った包み。
「今日は拓真の誕生日だからね…」
優しく微笑む夫の顔に、思わず涙が溢れた。
クリスマスプレゼントに、ケーキとローストビーフ、そして拓真が大好きな肉じゃがを揃えて、彼の部屋のドアの前に立った。
「拓真、誕生日おめでとう。お母さんもお父さんも、あなたがいてくれて、本当に幸せだと思っているわ。あのとき、あなたがつらい思いをしていたことに気づかなくてごめんなさい。何があってもあなたは私たちの子供よ。頼ってくれたって、わがままを言ったって、泣いたってかまわないの。ねえ、お願い、顔を見せて。私たちの大事な大事な息子の顔を見せて…」
そのまま2分ぐらい経ったろうか。がちゃり、と音を立ててドアが開いた。そこには、1年前より少し痩せた拓真が立ち尽くしていた。頬には一筋の涙が流れていた。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい…」
私たちは抱き合い、ひたすら泣いた。鉄の扉のように思えた拓真の部屋のドアが、きぃきぃと音を立てて揺れていた。
「拓真、誕生日おめでとう。メリークリスマス」
「ありがとう。でも、クリスマスに肉じゃがはないんじゃない?」
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さあさあ、イブの24日は失恋イベント@nanoですよ!
え?25日ですか?
もちろん、スケジュール帳は空欄ですよ。
(naomi)


















