間取りショートストーリー room10 数メートル先


来る日も来る日も、私はこのベッドに寝そべっている。いや、正しく言うと、動けないのだ、ここから。時折来る、白衣を着たお爺さんは「やはりダメですね…意識はあるんですが…」と、耳慣れた言葉を発する。この場所でその言葉を聞くのは、もう何回目になるのだろう。そのセリフを待ってましたとばかりに、父と母は泣き濡れる。これももう何度繰り返されたのだろう。2週間に1度訪れるその奇妙な確認作業と家族がこの部屋にやってくるとき以外は、西に頭を向けたベッドに寝そべり、バルコニーの間からひたすら外を眺める。それが私の日課だ。
そして、彼の姿を見つめる。向いの少し古いマンションに住む、その青年を。ほんの数メートル先にいる彼は、繊細な美しさと、若さ特有のみずみずしさを惜しげもなくはなっている。もちろん、名前なんて知らない。話をしたこともない。まさか彼も、向かいに住んでいる植物状態の女が、部屋のすき間から自分を眺めているなんて思いもよらないだろう。
彼が視界に入るたび、そのつややかな髪と見た目とは裏腹にゴツゴツとした手に触れたいと、激しく思う。今すぐこのベッドを抜け出し、バルコニーを超え、向こうのベランダまで飛び移れればいいのに、と。しかし、それがはかない夢であることは、自分自身が一番よく知っている。私は、間もなくこの世界から消えてしまう。切れ切れに続いてきたこの命も、ようやく終焉を迎えるのだ。この狭い世界から存在を消すことに、後悔することは何もない。私は不自由な時間を生き過ぎた。しかし、ここ以外の世界には、彼がいない。それはとても悲しいことだ。ああ、彼の心に何か残せていれば、こんなに悲しみに襲われることもなかったのに。ふと、頬を涙が伝う気配を感じ、それを最後に「私」は、消えた。
「あれ?」
「どうしたんだ?」
「いや、ベランダに花が咲いてて。この前までなかったのに。なんなんだろう、この花」
「ああ、それ雪の下っていうやつだ。うちのばあちゃん家によく咲いてたよ。しかし、なんでそんなとこに生えてんだ?」
「へー…かわいい花だな。」
「そういえば、ベランダから見えるんだよな?向かいに住んでるって言うお前の“お姫様”。今日もいるのか?」
「…ああ。彼女は亡くなったみたいだ。この前、たくさん車が来るしなんだか騒がしいなと思っていたら、家から棺が出ていくのが見えた。ずいぶん長い間、病気だったみたいだし…」
「…そうか。悪いこと聞いたな…。でも、一度見てみたかったな。どんな子だったんだ?」
「そうだな、とても綺麗な髪をしていた。あとは…色の白い子だった。まるでこの花みたいに、美しい肌をしていたよ」
青年はその夜、花を小さな鉢植えに植え替えた。可憐な小さな花を見つめていると、名前も声も知らない少女の姿が浮かんだ。
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はい、ストックしていた間取りがなくなりました。
明日担当のみほたんには相談メールが届いたようですね。
……
………うらやましい。
そんなわけで間取りショートストーリでは、ちょっと変わった間取り図を募集しています。
画像or画像が乗っているURL、紹介してもいいお名前をご記名の上、
scrapmadori@gmail.com
までお送りください!
みほたんにメールが来たことに、相当ショックを受けています。
みなさま、ご救済ください。
そんなわけで、明日はみほたんのエンペラータイム!
(タニグチ)
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