room13 青にも、雨にも似た


私の上には、青空が広がっている。いや、正確に言うと、青空しか、広がっていない。
大の字になって寝る、という言葉があるが、おそらくその言葉は今の私を表すために作られたものなのだと思う。太陽の光を素直に吸収したコンクリートが、じりじりと背中に熱を通している。足元には、レザーの学生カバンやくだらないことばかりが書かれた教科書、靴下、スニーカー。いっそこの暑苦しい制服も脱いでしまおうかと思ったが、一応年頃の女の子なのでやめておいた。
父さんが家を出て、2週間が経った。とはいえ、この1年、他所の女の家にばかりいてここにはほとんど寄り付いてなかったから、たいした変化はない。少なくとも、私は。でも、母さんは違った。毎日泣きながら飲めもしないお酒を浴びている。家の中は、アルコールと母さんの涙のにおいが充満していて、それに触れると気が狂いそうになる。そんなわけで、私はここ最近、家の中に居る母さんに気付かれないよう、こっそり屋上に上がってヒマをつぶしている。何をして過ごすわけでもなく、夕暮れまでこうして仰向けになってただ時間をやり過ごす。おかげでずいぶん健康的な小麦色の肌を手に入れることができた。
ぼんやり、ただぼんやりとここに寝そべっていると、いろいろなことが頭を巡る。
どうして父さんは他の女を選んだのか。なぜ母さんは父さんに執着するのか。もうすぐやってくる中間試験。陰で私の悪口を言っている友達。おとつい告白された、気の弱そうなクラスメイト。初めて付き合った先輩。その先輩としたキスとセックス。
「くだらない」
口をついた言葉は、誰もいないその空間に吸収して、消えた。
私は、いつまでここに寝ているのだろう。いつになったら、ただひたすら闇に落ちていく母さんと、いや、母さんだけじゃない。このくだならいことが渦巻いている世の中と向き合うことが出来るのだろう。嫌だ、何も考えたくない。どこにも行きたくないし、誰とも会いたくない。いつか愛も情も消えてしまうのに、どうして人は出会おうとするのか。群れようとするのか。依存しようとするのか。そんなことしたって無駄じゃないか。だってどうせ、なくなるんでしょう?
いつも頭の中を駆け抜ける、答えのない疑問。考える事自体が面倒くさいのに、なぜこんなことばかりが頭を占拠するのだろう。私は頭の思考回路をシャットダウンするかのように、目を瞑り、浅い眠りについた。
ふと、何かが頬を叩いて目を覚ました。さっきまであんなに晴れていた空が、機嫌を損ねたかのように暗雲を携えて、少しずつ水滴を落としていた。
「やだ、雨?」
私は急いで転がっている荷物を拾い集めた。そのとき、開けっ放しだったカバンの口から、一枚の紙切れが落ちた。薄いブルーの紙を手に取り、薄暗い光の元にさらした。そこには、父さんの几帳面な字が並んでいた。
“愛へ ごめん”
その言葉を見たとたん、ふっ、と何かが体を巡り、ヒザが崩れた。次の瞬間には涙の塊が目からこぼれてきた。
「なんだよ、ごめんって!そんなこというくらいなら、母さんも私も、傷つけるんじゃねえよ!勝手なことばっかいってんな!お前に同情される覚えなんてねーんだよ!ふざけんな!」
さっきまで小粒だった雨は、次第に激しくなり、街も私も濡らしていく。私が発した、精一杯の叫びは、ごうごうと鳴り響く地鳴りにも似た雨の音にかき消されて、消えた。ひたすら泣いて、ありったけの悪態をついたあと、最後に残ったのは父さんと母さんへの愛情だった。私が泣き止むのを見計らっていたかのように、雨がやみ、また青空が広がり始めた。その青は、私が今までに見たどんな青より、綺麗だった。
「くだらない」
そう吐き捨て、屋上のドアの前に立った。この先に続く階段を下りたら、母さんと話をしよう。まずは酒瓶を奪い取らなきゃ。ひっぱたいて「しっかりしなさい」と渇を入れてやらないと。ああ、くだらない。本当にくだらないよ。
ドアノブをまわし、外側に引き寄せた。さびた鉄の扉は、入ってきたときより、軽い気がした。
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隔週じゃないですよ!隔週連載じゃないですよ!
私の妄想力と、おもしろ間取りが不足しているからなのですよ!
妄想力は頑張って鍛えます!しかし間取りはみなさまのご協力を乞いたいです。
そんなわけで、間取りSSではちょっとかわった間取りを募集中です。
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までどしどしどしどしどし送ってください!
急ぎ足でまとめているのは、あと15分で「夜の学校からの脱出」の集合時間なのだからですよ。
遅刻だよこれ。
そんなわけで明日は教育実習中のみほりんが「ラスボスです。」をお届けいたします。
(タニグチ)
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