ようこそ、ゼペット教授の異常犯罪相談室へ_クリアファイル謎_正解
所長 「そう、真相は、美しいパズルという狂気に取りつかれた末の自殺だったんだ」
改めて事件の真相を語る所長の声に、あなたは耳を傾けた。
波鶴は「お前は見たことあるパズルしか作れない」と自分を馬鹿にしてきた礒旗が許せなかった。そして、礒旗を見返してやるためにどんな手でも使ってやるという、ある種の異常な精神状態に自分を追い込んでしまった。
そして、彼が思いついたのが、自らの命をかけて「絶対に誰も見たことのない、バラバラ遺体をヒントとして使うパズル」を作ることだった。
自分1人では遺体の切断などが不可能なため、波鶴は金を使って遺体の処理を狩口に依頼したのだが……ここで波鶴の計画に誤算が生じた。狩口が、メモの意図を曲解したのだ。
遺体を使ったスケルトンパズルが作りたかった波鶴にとって、当然、狩口に依頼したかったことは、遺体を切断することと、スケルトンパズルの盤面を残すことの2つだけだった。
しかし、狩口はメモにある「スケルトンパズルを完成させろ。あとは任せた」「これで礒旗に目にもの見せてやる」という文章から、「波鶴は自殺を礒旗の犯行に見せかけようとしていて、『いそはた』が答えになるスケルトンパズルを作っておくように依頼されている」と勘違いをしてしまった。
その結果、遺体を切断すること、スケルトンパズルの盤面を残すことに加え、自ら制作した7つの問題を現場に残すという行為に及んだのだった。
所長から経緯を聞いた時点で事件の真相に気づいていたゼペットが捜査に協力した理由はただ1つ。「美しき芸術品」である、命を懸けて作った狂気のスケルトンパズルが、狩口という「愚か者」の手で「汚され」たことで、誰にも解けない状態になってしまったことが「許してはおけなかった」のだ。
所長はそこまで語り終えると、急に意地の悪い笑みを浮かべた。
所長 「ところで……この事件を君に知っておいてほしかった理由なんだけどね。実はこの事件の時に、ラビットくんにあることが起きたんだ……」
ラビット 「おい、所長!過去のことをベラベラ話すんじゃねぇよ!」
いつの間に近くに来ていたのか、所長とあなたの会話に、ラビットが割り込んできた。
所長 「おや、ラビットくん。いつから聞いていたんだい?」
ラビット 「たまたま通りかかったんだよ。なんか聞き覚えがある話だと思ったら……。ったく!」
所長 「そう、まあいいや。それで、ラビットくんに起きたことなんだけどね……」
ラビット 「おい!」
どうにか話を止めさせようと必死なラビットを面白がりながら、所長は話を続ける。
所長 「ラビットくんがゼペットのことが苦手なのはね、この事件がきっかけなんだ。なにせラビットくんはゼペットと対面したときにね……ゼペットの前で『嘘酔い』して、その場でばったり倒れっちゃったのさ」
「嘘酔い」という聞きなれない単語に戸惑うあなたに、所長は説明を続けた。
所長 「嘘と真(まこと)が巧妙に入り混じるゼペットの話し方は、嘘を敏感に聞き分けるラビットくんにとって最悪なのさ。まるで小舟に絶え間なく迫る波のように、次々に嘘と真が絡み合って押し寄せてくるもんだから、船酔いさながらに嘘に酔ってしまう……だっけねえ?」
ラビット 「……ああ、そうだよ。ったく、胸クソ悪い……にしても所長よ、それをわざわざコイツに教える必要ねえだろ!」
所長 「いいや、あるよ。我々はお互いを深く知っておかなくちゃいけない」
打って変わって所長の目に鋭い光が宿ったのを、あなたとラビットは見逃さなかった。
所長 「先の事件でゼペットが発した『雨男』という言葉……今後君たちは、きっと今まで以上に大きな闇と対峙することになる。それに対応するためには、 お互いの能力を知っておくことは絶対に必要だ」
ラビット 「……まあたしかに、俺はどう頑張ってもゼペットから話を聞き出すことはできねぇ。だが、コイツはそれを成し遂げて帰ってきた。適材適所……ってのはあるんだろうな」
所長 「そうとも。もう見習い探偵じゃない。紛れもない、セブン探偵事務所の仲間だ。仲間同士で隠し事をしても仕方ないからねえ……お互いに少しずつ話していかないといけない。我々の秘密も……君の秘密も……ね」
あなたは所長の言葉にざわつく内心を悟られないようにしながら、これから対峙することになるであろう大きな闇を思って、力強く頷いた。
【つづく】
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