Collection:lie(エンディング) クレイ…このエマさんが言っている「クレイ」はクレイ先輩で間違いない。写っている姿だってそうだ。それにこのお揃いのストラップも、クレイ先輩は確かに持っている。たまたま私が作業したカードの中にあった、大学での話…そのとき見た写真の奥おくにも映っていた。 「このストラップ…僕が小学生のいとこと一緒いっしょに作ったやつ…間違いない、その話をしたらエマがもらってくれたんだ…。てことは、このエマさんって僕が付き合ってた…カルネさんに確かめに行こう!」 * * * 館長室を強めにノックして、返事が来るよりも先にクレイ先輩は部屋の中に入る。カルネさんはまた、ただ俯いて小さくなっていた。 「なんだ今度は」 「カルネさん! エマが病気だったってどういうこと!?」 ついにクレイ先輩は秘書さんのことを無視してカルネさんに問いかける。 少し取り乱したようなクレイ先輩の言葉に、カルネさんは少し悲しそうな顔をした。だが、息をひとつ吐はいたあと、全部バレてしまったならしょうがない、とでもいうように体の緊張きんちょうをといてソファーにもたれかかった。 「……調べちゃったの? …せっかくバレないようにしてたのに」 秘書さんは完全においていかれたとポカンとした顔でこちらを見てくる。何も言わず聞いておいてくださいよ、とアイコンタクトをした。 クレイ先輩には、知りたいことがたくさんあるはずだから。 「ねえ、このエマって…」 「クレイさんと付き合ってたことのある人で間違いないよ。私のお姉ちゃん、エマの言葉」 「じゃあエマは本当に病気なの? …病気だから、僕と別れた…?」 「…そうだよ」 「教えてくれたらよかったのに…!」 「お姉ちゃんが嘘をついてまで隠すって決めたんだから、しょうがないじゃん! クレイさんのために、忘れてほしいっていうんだから。だったらこのワードカードも見つかるわけにはいかないでしょ」 そういうカルネさんの顔も、本当のことを聞いたクレイ先輩の顔もつらそうだった。 余命宣告をされて、それを知って悲しんでほしくなくて、何も告げずにいなくなったのは、きっとエマさんの優しさだったんだろう。それをわかっていたから、カルネさんも盗んでまで隠そうとした。誰かが悪いと言いづらいからこそ、やりきれない気持ちが募つのっていく。 次は秘書さんが口を開いた。 「カルネさんは、お姉さんの嘘を守るために盗んだのか…?」 秘書さんはやや私にも伺うかがうようにそう呟いた。そうです、あってます。そういう気持ちを込めて私は頷うなずいた。 「それもそうだけど…お姉ちゃんはクレイさんのためを思って嘘をついたの。なのに、詐欺師さぎしの言葉と一緒にされるのもちょっと腑ふに落ちなかった。真実を嘘呼ばわりしては、嘘にも真実にも失礼ですからって館長さんも言ってたじゃない、優しい嘘は、本当に嘘って扱あつかっていいの?」 それには誰も答えられなかった。 重い空気の中で、沈黙ちんもくが流れる。 …だが私はそれと別に、ひとつ気になっていることがある。カルネさんのお姉さんは梅雨ごろが余命と言っていた。今は四月。もしクレイ先輩が現状に納得がいかないなら、本人にきちんと話に行くことだって…まだ間に合うのではないだろうか。 *** 私のスマートフォンが鳴る。クレイ先輩からの通知だった。 「お疲れ様、君のおかげであれからエマに会うことができたんだ。本当に会うべきかどうか少し悩なやんだけど…僕は、会えてよかったと思ってる。だってやっぱり僕は、エマのことが好きだったから」 私が、今ならまだエマさんにもう一度会うことができるんじゃないかと提案したとき、クレイ先輩は迷っていた。優しい人だから、エマさんの忘れてほしいという願いを知ってしまった以上、その想いを尊重するべきなんじゃないかと思ったんだろう。 それでも、私は会いにいくべきだと背中を押した。 確かにエマさんはクレイ先輩を想おもって嘘をついた。それは彼女の優しさで間違いないけれど、クレイ先輩にとって必要な嘘だったかどうかは別モノだと思ったから。優しい嘘は悪じゃない。でも嘘をつかないでほしい、真実を教えてほしいっていう権利は平等にあるはずだ。 「それでね、また夏祭りに行く約束をしたんだ。…本当に余命通りだと嘘になっちゃうけど、どうにかこの約束を果たせるように頑張ろうって。治る確率は低いって聞いたけど、ゼロじゃないみたいだからこれから一緒に頑張っていくよ。本当君のおかげ!」 よかった。エマさんとの関係も良い方に進んだようだ。ここから先私にできることはもう、二人の幸せを願うことくらい。 そういえば、カルネさんはあのあとどうなったんだろう。あの日はカルネさんの処罰しょばつは後日館長と話し合って決める、と秘書さんが言っていたきりで、私は結果を知らない。個人的にはカルネさんの言い分も理解できたから、あまり厳しい対応ではないといいけれど… 「そうだ。カルネさんはお咎とがめなしになったから心配しないで。彼女の主張も理解できるって館長が判断してくれてね、ワードカードの振り分け方も変わったんだ。嘘か真実かだけじゃなくて、判断見送りのグレー枠わくの誕生だ。これで無理やり嘘か真実に振り分けることもなくなった」 「ありがとう カルネ」 お礼の部分はカルネさんがクレイ先輩のスマホから打ってくれたのかな。よかった。クレイ先輩とカルネさんの関係も良さそうで一安心だ。 初めは闇バイトかと思ったけど、まさか人助けができるなんて。それだけでもバイトに応募してよかったなと思った。 「ああごめん、そろそろバイトの時間だからもう行かないと! 君もまたバイトしにきて! 君なら館長も大歓迎だいかんげいだってさ。それじゃあまた!」 クレイ先輩に返信して、私はスマホを閉じた。 ふと、求人を見つけた雑誌をコンビニで見つけてぱらぱらとめくる。最後のページの片隅を確認しても、そこには「嘘検品作業員」の求人広告はなかった。あの日、あの広告を見つけたのはある意味運命だったのかもしれない。 嘘みたいな、本当にあった不思議な仕事。気が向いたらまた、またバイトしにいくのも悪くない。 ▲画像を保存してシェアしよう クリア画像、外封筒のみシェアOKです! おめでとう! 見事に「Collection:lie」を解き明かした! 謎を解き明かしたことをシェアしよう! アンケートはこちら 「Collection:lie」 ディレクター:湯本このか 謎制作:三島彰祐 湯本このか 制作進行:和泉由香里 デザイン:原耕造 校正:伊藤紘子 謎監修:あらなみゆうた 「Mystery for You」 企画/制作:SCRAP プロデューサー:きださおり 田口正也 サービス運用:江坂果穂 髙波由希帆 広報:髙波由希帆 クオリティチェック:櫻庭史郎 パッケージデザイン:加藤咲 システム:株式会社メタップスペイメント エグゼクティブプロデューサー:飯田仁一郎 製作総指揮:加藤隆生