荷物に隠したラブレター(第三章 エンディング?振り返り) 部下との連絡れんらくを終えた私を待ち受けていたのは、猛烈もうれつな両足の重みでした。張り詰めていた緊張きんちょうが解け、蓄積ちくせきしていた疲労ひろうが一気に押し寄せてきたのでしょう。あいにくエレベーターはいまだエラーから復旧していない様子。重い足を引きずりながら階段を駆け下り、スタッフルームへ辿たどり着いた私を待っていたのは、慌あわただしいホテルスタッフたちの光景でした。 「フロントから予約情報が閲覧えつらん不能との報告が!」 「おい、監視かんしカメラの録画データが消えてるぞ!」 「カードキーが反応せず、客からのクレームが殺到さっとうしています!」 「宿泊者名簿めいぼも経理データも、すべてのデータが削除さくじょされた模様!」 状況じょうきょうが理解できません。デジタル式爆弾は、確かに私の手で電波遮断用の特殊容器に封ふうじ込めました。容器の性能も保証されているはず。しかし、これらのデータ破壊は間違いなくデジタル式爆弾によるものです。 そこへ、動揺どうようを隠かくしきれない様子のボーイが扉とびらを叩き割るような勢いで飛び込んできました。 「ち、地下3Fのサロン内で胸を撃うち抜かれた女性の遺体を発見しました……! あの姿、間違いなく、リ……リンちゃんです!!」 サロン内に女性の遺体……? 彼の話を整理すると、どうやらリンちゃんと呼ばれるこの女性は19時ごろ何者かによって殺害されたようです。 まさか、デジタル式爆弾によるデータ破壊は、この暗殺をカモフラージュするための工作? 混乱を招くと同時に、暗殺の証拠しょうこを抹消まっしょうするための犯人による罠……! ……とはいえ、爆弾は回収したはずです。本来ならば犯人の目論見が外れ、監視カメラの抑止力よくしりょくで暗殺は防げているはず。ならば、一体なぜ、このような事態になっているのでしょうか。私の完璧かんぺきな経歴に初めて傷がついた瞬間しゅんかんでした。 前のページに戻る