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  2. 2月14日、12時の鐘がなるまえに。11

2月14日、12時の鐘がなるまえに。11

【第9章】

「ふう……事務所の人間と一緒にきていて助かったよ……今回は偶然この街で任務があったみたいだから良かったね。彼から携帯を拝借しなかったらどうなってたことか」

「ジョバンニさんに感謝ですね!」

「まあ、少し眠っている間にちょちょっと借りたから、彼は気がついてないみたいだけど」

あなたとカムパネルラがいるなんでも相談所の、ジョバンニという人間の携帯を借りて無事に2つ目の油揚げを手に入れた3匹は、さっそくネオ稲荷ジンジャへと向かった。

あの日と同じように、長い長い階段を駆け上り、社にたどり着く。

油揚げをお供え箱にそっと置いてもう一度お願いをすると、後ろから懐かしい声が聞こえた。

「こんにちは。きっと聞きたいのは、ショータくんのことでしょう?」

「はい。彼がなぜいなくなってしまったのか、どこにいるのか、教えてくれませんか……?」

「……彼は、もうこの街には帰ってこないわ」

「……え?」

ハイネはその言葉を聞いてゆっくり瞬きをし、きつねの顔を見た。

「正しく言うと『今日から』だけど」

「そ、それはどういうことですか……?」

「あなたが人間になったあの日、2月14日の夜。彼もジンジャに来ていたでしょう? あの日彼は、お母さんから遠くの街へ引っ越すことを言われて、飛び出してきたみたいなの」

「遠くの街……引越し……」

「油揚げを持って、お願いしにきたわ。大切な友だちがいるから、この街に残りたい、って。このジンジャで出会った、大切な友だち……ある雪の日に真っ赤なマフラーをあげた灰色の猫の子だから、きつねさまも知ってるでしょう?って」

その言葉を聞いたハイネの目は見開かれ、みるみるうちに涙が溜まっていく。

「それは、もしかして」

「もうわかるでしょう?ハイネ、あなたのことよ」

ポロポロと、ハイネの目から涙がこぼれ落ちた。

「彼は、それまでもずっと、ここに来てお願いをしていたわ。あなたと一緒にいたいって。お母さんに反対されていたけど、お家で一緒に暮らせたら嬉しいなって」

「ぼくは……ぼくは、そんなショータの気持ちに気づかずに、灰猫のぼくなんか会わない方がいいって決めつけて……」

「気持ちに気がつかないのは仕方のないことだわ。だって、ショータくんだって自分の気持ちをあなたに伝えはしなかった」

「……でもね。あなたが人間じゃなくても、まわりからからかわれていた灰猫だったとしても……彼にとってはみてくれなんかじゃなくて『あなた』が大切だったの」

涙を流したまましゃくり上げるハイネの背を尻尾で撫でて、きつねは話を続ける。

「2月14日のあとも、ずっとショータくんはここに来ていたわ。2週間ほどたって、ようやくお母さんを説得できたって報告にきてくれたの。でも、あなたに会うことができないまま、引越しの準備をするために遠くの街に何度か行かなければならなくなってしまった。少しずつ荷物をはこんでいたみたいね」

「そして今日、3月14日が、本当に本当の、最後の日。引越しの準備がすべて完了したショータくんは、遠くの街へ行ってしまう」

「さあ、早く行きなさい、ハイネ。彼が行ってしまう前に」

その言葉を聞いたハイネは、あの日のようにジンジャの階段を駆け下りる。

違うのは、その目には悲しい涙がないことだけ。

きつねに行ってらっしゃいと言われるように尻尾をふられ、カムパネルラとあなたも、後をついて駆け出した。

息を切らしてショータの家の前につくと、ショータの家族が、荷物を積み終わり車に乗り込むところだった。

ハイネは、あの夜に諦めたはずだった、眩しくてきらきらしたところに向かって、大きな声で、にゃおん、と鳴いた。

「灰音……?」

その声を聞いたショータはハイネの姿を見つけると、ぱあっと花が咲くように嬉しそうに笑い、こちらに駆けてきた。

ハイネも、たまらず駆け出して彼の腕の中に飛び込む。

「よかった、また君に会うことができて」

ショータはそう言うと、あの日、階段で落とした真っ赤なマフラーを首に巻いてくれる。

「次に会ったら、言おうと思ってたんだ」

「もし……もし灰音さえよければ、ぼくたちの家族になってくれる……?」

そう問いかけるショータの目をじっと見つめたハイネは、いいよ、と伝えるようにショータの頬に頭を擦り付け、ゴロゴロと喉を鳴らした。

「ふふ、あはは! くすぐったいよ、灰音!」

幸せそうな声と音があたりに響き渡る。

「ありがとう、一緒に来てくれるってことで、いいんだよね?」

ハイネは、ショータと目を合わせると、ゆっくりと目を閉じてまばたきした。

「よかった、じゃあ一緒に行こう」

ハイネはにゃあ、と嬉しそうにひと鳴きし、ショータに連れられて車に乗り込んだ。

車の窓から、一度こちらに視線を向けて、ありがとう、新入りさん、カムパネルラさん!と言ったハイネに、あなたとカムパネルラは尻尾をゆらゆらさせて答えた。

発進し、どんどん小さくなっていく車を見ながら、カムパネルラはあなたに話しかけた。

「よかった、あの様子なら、きっともう大丈夫だね」

「言葉なんて通じなくっても、想い合うその気持ちがあれば、種族が違ったって、なんのそのさ」

あなたも、そうかもしれない、と彼らの先ほどのやりとりを思い浮かべ、空を見上げた。

「あ、そういえば、君は気がついたかい? ショータくんの本当の好きなものに」

急に質問を投げかけてきたカムパネルラに、あなたは首を傾げる。

「あの夜、もう一つ紙を見つけていたんだよね。ほら」

「きっと、君ならもう、本当の答えがわかってるんでしょう?」

ショータが本当に好きなものは?

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答えはひらがなで

ショータの本当に好きなもののヒント

最初の日記の謎で「一番大きい公園」は「ほしぞら公園」と答えていたが、途中のストーリーで「はなぞの公園」が一番大きい公園だと分かったはずだ。
左から4番目の謎の答えを「はなぞの」にして解き直してみよう。

答えはこちら

公園の名前が変わったことで、「ほしふたつつくり」が「はなふたつつくり」に変わる。
ショータくんの先生へのメモから、この用紙も絵日記と一緒に渡されることがわかる。
手元にまったく同じメモ用紙があるのでそれを使って花を二つ作ると、白い矢印の先に「猫のはいね」という答えが現れる。

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