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  2. 2月14日、12時の鐘が鳴るまでに。6

2月14日、12時の鐘が鳴るまでに。6

【第4章】

街をたくさん歩いて「ネオ稲荷タウン謎解きラリー 事務局」と書かれた仮設テントに着く頃には、街は夕暮れになっていた。

猫であることを隠すため、先ほどの帽子と手袋、コート一式を身につける。

そして、カフェの店員さんに伝えた時と同じように、「おめでとう」と手袋をつけた手で答えを伝えた。

これが猫のぼくたちにできる、言葉を伝える方法。

「正解! 参加してくれてありがとね。はい、これプレゼントの商店街特製油揚げ」

ハイネの手に、油揚げが渡された。

「手に入ったね、油揚げ」

「はい…… これを持ってジンジャに行けば…… きつねさまに、会えるんですよね」

ハイネたちは手に入れた油揚げを落とさないように、ネオ稲荷ジンジャへと向かった。

商店街を抜けて川を渡り、ジンジャの入り口にたどり着くと、大きな鳥居から、先が見えないほど長い長い石の階段が続いていた。

「これは、すごいね……これをハイネくんは毎日登っていたの?」

「……はい。ショータくんに会えると思うと、一瞬に思えるんです。不思議なことに」

ハイネは小さな体で大きな階段を一段一段上っていく。カムパネルラとあなたもそれに続いた。

長い長い階段を上り、ヘトヘトになりながらようやく上までたどり着いた頃には、日が暮れて真っ暗になっていた。

背の高い木に囲まれた中、月明かりに照らされているネオ稲荷ジンジャの社があった。

空気は澄んでいて冷たく、厳かな雰囲気がただよっている。

神社の本殿の両脇には、先程商店街にもあった干支の置物のようなきつねの石像が2つ、狛犬の代わりに飾られていた。

その間を通り過ぎ、ハイネは持っていた油揚げをそっと、お賽銭箱の隣にあるお供物と書かれた木の箱に入れる。

そうしてゆっくりと目を閉じ、小さな手を合わせると、小さな声で言った。

「きつねさま、きつねさま。ぼくを、人間にしてください」

あたりはしん、とした空気につつまれ、風の音がやんだ。

ハイネの後ろ、ちょうどきつねの石像があったところから、凛と澄んだ声が聞こえてくる。

「私に何か、お願いごとですか?」

後ろを振り返ると、石像のうちの1体が本物のきつねの姿に変わっていた。

綺麗な金色の毛並みを持つ長い尻尾を揺らめかせ、こちらを静かに見つめている。

緊張し、息を飲み黙り込むハイネだったが、目の前のきつねはその様子を見て細い目をニッコリとさせて近づいてくると、甲高い声をあげた。

「あら! かわいい子猫ちゃん!」

「え、え…… ?」

最初の凛とした様子とは印象が違うきつねの様子に、ハイネは戸惑う。

「あはは! ごめんなさいね、私ったら。 も〜、せっかくしゃんとして、かっこよく話しかけたのに、ついつい、いつもの調子で話しちゃったわ!」

からからと口を開けて笑っていたきつねは、ハイネの首元を見ると一瞬きょとんとした顔になり、それから目元をやさしげに細めてほほえんだ。

「その真っ赤なマフラー…… あなたは、あの時の子ね」

「…… ぼくのこと、知ってるんですか?」

「もちろんよ! 私はここにずーっと住んでるのよ。ここで起こったことはなんでも知ってるわ。あなたが、ショータくんと、このジンジャで出会って遊んでたこともね」

「ショータくんのことも知ってるんですね…… !」

「ええ、もちろん!あの子も昨日、油揚げを持ってお話にきてくれたのよ。 …… そういえばさっきの、『人間にしてください』って言ったのは、もしかして」

「はい、ショータくんに、想いを伝えたいんです」

「…… それは、今の姿のままじゃ、ダメなこと?」

「…… はい」

「言葉が通じないから?」

「もちろん、それもそうですが……彼の友だちにも笑われるような、灰猫のぼくじゃ、彼に想いを伝える資格なんてないんです」

その言葉を聞いたきつねは、何かを言おうと口を開こうとして諦め、ふう、とため息をついた。

「わかったわ。一度だけ、人間にしてあげる」

「でもね、この力がつづくのは、ジンジャの12時の鐘が鳴るまでよ。12時になったらあなたは子猫の姿に戻ってしまう」

「それまでに、あなたの想いを伝えなさい」

ハイネはきつねの言葉に、深く深くうなずいた。

きつねは、そっとハイネに近づくと彼のおでこと自分のおでこを合わせる。

「目を閉じて」

きつねのその言葉通りにハイネが目を閉じてしばらくたった後、「わあ、すごいねえ!」というカムパネルラの声が聞こえた。

「さ、もういいわよ」

恐る恐る、ゆっくりと目を開ける。

すると、目の前に見えるはずだった、きらいな灰色で肉球のついた手が、小さな人間の手に変わっていた。

「わ…… すごい」

ハイネは手を開いたり、閉じたり、くるっと回ったりして自分の様子を確かめる。

猫だった頃と同じ灰色の髪とブルーの目、背は小さく、ショータと比べると2〜3才ほど年下に見える。

首には、猫の時には大きすぎた真っ赤なマフラーがちょうどよく巻かれていた。

「ぼく、ほんとうに、人間になれたんですね……」

ハイネは、頬を染めて嬉しそうにほほえんだ。

「ええ、でも、さっきも言った通り、あなたが人間でいられるのは12時まで。2月14日、12時の鐘がなるまでに、想いを伝えられるよう、頑張って」

「はい。きつねさま、ありがとうございます…… !」

人間になれたことが嬉しくてそわそわしているハイネに、カムパネルラがそっと声をかける。

「12時…… ってことは、あともうちょっとかな。夜も遅いし、この時間ならきっとショータくんは家にいるはずだよ」

「そうですね…… この姿で会いにいくのは緊張しますけど…… でも、きっと灰猫の姿よりは、ずっといいはずですよね」

少しだけ、寂しそうにハイネは言った。

「…… よし、ショータくんの家に行きましょっか」

「そうだね、善は急げだよ。ハイネくん」

「頑張ってね、応援してるわよ。…… もっと自分に自信を持ちなさい」

こうしてあなたとカムパネルラ、人間になったハイネはショータの家へと向かった。

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