『侵入者発見！ 職員は至急警備にあたってください』
お告げを出した数時間後、施設内にサイレンが響き渡った。
「何があったの？ まさか、和彦…？」
夏織が少しの不安と期待の表情を見せる。

しばらくして、所長に連れられた和彦が目の前に現れた。
「和彦！」
「まさかここに侵入とは… 何が目的ですか？」
あわててあなたが所長に説明する。
「違うんです！ その人は夏織さんに会いたかっただけなんです！」
「新人さん？ どういうことですか？」

あなたは和彦の短冊のこと、その恋人がここで働く夏織であること、自分たちがお告げで彼をかささぎに乗せたことを説明した。
所長は黙って最後まで聞いたのち、和彦の拘束を解いた。
「私たちの仕事は、1年に一度、短冊に書かれた七夕の願いを叶えることです。 短冊に書かれていたのなら、1年に一度はちゃんと叶えてあげなければいけませんね」
そう言って所長は静かに去っていった。

「和彦… 会いたかった…！ 来てくれてありがとう。 それにしてもよくここがどこだかわかったね！」
「まさか君が空の上にいたなんて思いもしなかったよ。 同じ街にいるはずなのに、近くて遠い？ みたいな。 でも、短冊のお告げでハッとひらめいたんだ」
「私もまさか空の上なんて思わなかったけど、この新人ちゃんが解き明かしてくれたんだ」
そういってあなたを得意げに紹介した。
「短冊に書いた願い事って本当に叶うんだな。 でも今日だけか… 会えるのは」
「所長も言っていたけど、私たちの仕事は1年に一度短冊の願いを叶えること。 だからきっと来年も和彦が短冊に願いを託してくれたら…」
2人が顔を見合わせ微笑み合う。

あなたはなんだかこれ以上見届けるのは野暮だと思い、退散することにした。
きっとまた来年も自分が彼の願い事を叶えることになるのだろう。
来年もまた、七月七日、夕刻に！