佳苗は、参道に並ぶ屋台の中からおしるこ屋さんを探し出し、1つ購入した。
紙コップに入ったおしるこから湯気が立ち上る。
ふぅふぅと少し冷ましてから、ひとくち飲む。その瞬間、背後から聞き慣れた声がした。
「佳苗！」
振り向くと、金子マコトの姿があった。

佳苗はマコトに向かって言った。
「正直、来てもらえないって思ってた……。私は少し前からお休みに入ったけど、マコトくんは年明けにあるサッカーの大会に向けての練習で、毎日遅くまで忙しそうだったから」

マコトと出会ったのは高校1年生のときだった。
彼はその頃も今も、サッカーに夢中だ。

マコトは少し気まずそうに答える。
「心配させてごめん。でも、サッカー部のみんなが『ちゃんと休んで佳苗ちゃんとこ行ってやって』って言ってくれたんだ」

そこまで言い終えると、マコトは佳苗のカバンからのぞく帽子を指差して言った。
「それ、俺が失くしちゃったやつだよね。見つかったの？」

佳苗は小さくうなずく。
「聞いてマコトくん。私ね、おみくじで大大吉を引くことができたの。
今日、元日に。それで、失くしちゃったこの帽子が見つかりますようにってお願いしたんだ。
そしたら、本当に見つかったの。言い伝えは本当だったんだよ！」

佳苗はそう言って、帽子をマコト誠に手渡した。
受け取ったマコトは、しばらくその帽子を見つめていた。