Mystery for You 無人島からの手紙4
砂綺帆達はついにメッセージボトルを流した場所を特定することができた。
そこは非常に潮の流れが激しい海域で、その海域にある島は誰も住めず、無人島になっていた。
なので、砂綺帆達は海流が緩やかになるタイミングでこの島に向かった。
「先輩。この船転覆したりしないですよね? あたし泳げないんで!」
「確かにすっごい揺れるけど……一応救命具も着けてるし、大丈夫よ。ほら、冷静なジェロさんを見習って……ん?」
後ろに目をやると、そこには完全に突っ伏しているジェロさんがいた。
「ジェロさん?! 大丈夫ですか?」
「あ、ああ……すまない、乗り物に酔いやすくてね…… つ、着いたら教えてくれるかな…… ウッ、ウエップ」
「わ、わかりましたすみません寝ていてください!」
「何か、ギャップ萌えですね。いや、カッコいい人は酔ってても絵になるって感じかな」
「さっちゃん!!」
そうこうしながら、なんとか目的地の無人島へとたどり着いた一行。
空は青く澄み渡っていて、穏やかだ。しかし先ほどまで穏やかだった海は荒れ始め、波は高く、この島に誰も踏み入れさせないという何かの意志を感じた。
わずかな波際を歩いていく。どうやらここに手がかりは残っていなさそうだった。
島の奥へと続く道がある。この先に何かがあるかもしれない。
ほどなく進むと、そこには岩肌にぽっかりと大きな穴があいた洞窟があった。
「もし人がいるとするならば、ここで雨宿りや寝泊りができるかもしれません」
「ねえねえ何かあるよ!」
洞窟の奥で、ついに人の痕跡を発見した。
木でできた簡素なテーブルのようなものと、草を敷き詰めた寝床のようなもの。
「……! あ、あぁ……」
奥の壁には寄り掛かった状態の、白骨化した人のなきがらがあった。
「嘘……嘘でしょ……?」
急いで砂綺帆が駆け寄る。
咲やジェロも驚きを隠せず、ぼう然と立ち尽くすしかなかった。
「砂綺帆さん、それ…」
ジェロはなきがらの近くに大きなバックパックがあることに気が付いた。中に何かあるかもしれない、そう思い彼はリュックを開けると、そこには1冊のノートと数枚の写真が入っていた。
砂綺帆は黙ったまま写真を見た。そして、何かを悟ったようだった。
「それ……先輩じゃないですか! 先輩と、男の人……?」
「砂綺帆さん。この人が……以前話していた、冒険家の彼、ですか」
「……はい。彼は、間違いなく私の大学の先輩、道端空さんです……どうしてこんな……」
何かがこみ上げ、砂綺帆は泣き崩れてしまった。
「……なるほど、どうやら彼が最期に残したであろう手紙があります。砂綺帆さん、僕が代わりに読んでも良いですか?」
「……見る勇気がない。読んでもらえますか」
「……わかりました」
ジェロは深呼吸をし、手紙を読み始めた。
「私の名前は道端空。世界を旅する冒険家として、今回はこの島を舞台に選んだ。兼ねてよりやってみたかった実験をするつもりだった。それは、この海流の激しい島からメッセージボトルを流したとき、果たしてどれほど遠くまで届くだろうという実験だ。もちろんどこにも漂着しない可能性もあるし、1本でもどこかに届けば優秀だ。私は、たくさんのボトルを持ち込んでこの島に来た」
砂綺帆は無言でうつむきながら聞いている。
「内容は何にしようか悩んだけど、とある人へのメッセージにすることにした。どうせ全部は回収されないだろうから、せめてここに答えを書いておくことにする。
私の好きな、航海砂綺帆さんという方に贈るメッセージとして。ひとつひとつ暗号を解き明かすと《わたしのすきなひとのこうかいさきほがすむなはにとどけ》というメッセージが現れるようにした。各謎には切れ目があったのでそれをもとにつなげることができたというわけだ。まあ何はともあれ、私はボトルを流したあと、元いたところへ帰るつもりだった。しかし……」
ジェロさんも少しずつ言いよどんできた。胸をえぐってくる内容だ。
「しかし……突然の悪天候に、私の乗ってきた船は破損し、そのまま流されてしまった。詰めがあますぎたのだ。当然滞在などするつもりもなかったので、メッセージボトル以外は何も持ってきてはいなかった。とにかく救助を呼ばなければならない。しかしここは絶海の孤島であり、携帯端末も通じない。荒れた海域ゆえほとんどの船が近付かないこの島では、誰かが来る可能性も絶望的だった。私は1人で来たことをくやんだ。一応、遺書的なものをここに書いておくけど、まあそうならないことをいのる。もし、誰かが来てこの手紙を読んでくれたなら、そんなに嬉しいことはない。どうかこの手紙を、日本の沖縄県に住む航海砂綺帆さんという方に届けてほしい」
「空先輩……!」
砂綺帆がおえつをもらしながら、彼の名前を呼ぶ。
~~~
卒業式を迎えた会場近くの、桜並木。
「空せんぱーい! ご卒業おめでとうございます!」
「砂綺帆ちゃん、ありがとね。大学生活って、あっという間だったよ」
「先輩は、やっぱりその、行っちゃうんですか?」
「……ああ。俺は世界をまたにかける大冒険家になりたくてね。来週には、日本を発つよ」
「そっか……寂しくなります」
「俺も、砂綺帆ちゃんと離れるのが寂しい。日本にこのまま残ることも考えたけど……やっぱり、夢を叶えたいなって。砂綺帆ちゃんは、海洋研究所に入ることを目指すんだよね?」
「はい、そうです。次の夏に試験があって、それに受かれば入所できます。ずっと追ってきた夢ですけど、うまくいくかどうか……」
「大丈夫、やれるさ。本当は俺、砂綺帆ちゃんに伝えたいことがあるんだけど……」
「え?何ですか?」
「君が海洋研究所に入所したら、伝えるよ!」
「え~、そんなあ」
「だから、砂綺帆ちゃんもがんばりなよ。俺も、がんばる!」
「はい。あの、必ずまた会えますよね?」
「ああ、気が向いたらまた日本に帰ってくるつもりだから。そのときは、また会おうな」
「絶対ですよ。約束!」
「ああ、約束な!」
春風に吹かれ、桜の花びらが散っていく。
~~~
「こんな再会、違うよ……」
遠い日の約束は、残酷なかたちで現実となった。
「手紙…… 終わり、ですか?」
「いや、もうちょっとあります」
一言一言を大切につむいでいくジェロ。その様子を、普段は元気な咲も大人しく見守っていた。
「実は、この謎だけで終わらず、最後の謎があったんだ。もし彼女に会えたら、この謎もあわせて伝えてください。本当は直接会って、出題するつもりだったけど…… まあ、ちょっと難しいかもしれないから、一応別のページにこっそりヒントと答えも書いときます。解けなかったら、見てね。と伝えてください。きっとこの謎を解いてくれている間は、俺のこと考えてくれるかな。それじゃあ、私はこの島から脱出できないか試します。きっとなんとかなる。だって私は、世界をまたにかける冒険家だから。……ここまでです」
「謎が、あるのね」
「ええ、メッセージボトルで届いたもの以外にも、何かまだ伝えたいことがあるのかもしれません」
「先輩! あたしにもできることがあったら言ってください。こんなことになるなんて思ってなかったけど、せめて彼が少しでもうかばれるように、そして先輩に少しでも楽になってほしいから」
砂綺帆は目をこすりながら、ゆっくりと立ち上がった。
「うん、ありがとう。彼の骨は、このまま日本に持ち帰って、帰りながら謎を解こう」
砂綺帆は彼の手紙と、砂綺帆と空の2人の写真を見つめた。
No.4の封筒を開けて謎を解いて、先輩の遺したメッセージを導き出そう。
メッセージがわかったら入力しよう。
内容物:謎用紙…1枚
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最後の謎のヒントを見る
ヒント1
今いる無人島の名前は分からないようだ。
ヒント2
この手紙はサキホに宛てたものであり、本来この無人島で解くものではない。つまり、本来サキホがいた島は?
ヒント3
サキホがいる沖縄本島で解くようにできていたとしたら……それぞれ『沖』『縄』『本』『島』の下を順に読んでいこう。
答えを見る
「君の夢が叶いますように」