そして披露宴当日。
新婦の友人として参加した。
どうやら、この披露宴には新婦の友人しか呼んでいないようで、周りには大学時代の友人がたくさんいた。

「久しぶり！ 元気にしてた？」
「元気元気！ 7年ぶりくらいかな？ そうそう、ホノカの旦那さんって見たことある？」
「そういえば見たことないかも。そっちは？」
「私もないんだよね、ここにいるみんな見たことないみたいで」
「ここでお披露目なのかもね、サプライズってのはホノカらしいけど」
「確かに。でもサプライズが好きなくせに、ホノカはすぐ……」

久しぶりにあった友人たちと談笑していると、会場の照明が消えた。
そして、結婚式の定番の音楽が鳴り響き、2つの扉にスポットライトが当たった。
左の扉が開くとそこにはドレス姿のホノカがいた。
右の扉の奥にはきっとホノカの旦那さんがいるはず。
私たちはどんな人なのかワクワクしながら、扉が開くのを待った。
音楽の盛り上がりも最高潮になった瞬間、もう1つの扉が勢いよく開いた。

……しかし、そこに新郎の姿はなかった。
音楽も止まり、会場はしんと静かになった。
誰も状況を理解できないまま、ただ立ちすくんでいると、
「みなさん、大変です！ 新郎が誘拐されてしまいました」
とマイクを持った男の人が、新郎が出てくるはずだった扉から現れた。
もちろん、私たちの友人ではない。
そして、発言を続けた。

「私は、このホテルに潜入していた探偵のクロキです。先ほど、新郎のレオさんを誘拐したという手紙が送られてきました。誘拐されてから30分以内に新郎が閉じ込められている場所を突き止めなければ、新郎新婦は2度と再会することができなくなってしまうようです。」
探偵と名乗る黒いスーツの人は、今の状況を端的に話した。

「しかし、先ほど暗号のようなものを発見しました。これを解き明かせば、きっと新郎がいる場所がわかるはずです。新婦のご友人であるみなさん、どうかお力を貸していただけないでしょうか？ お力を貸してくださる方は拍手をお願いします！」

このままじゃホノカの晴れ舞台が台無しになってしまう。
そう思った私と周りにいる友人たちは、探偵に向けて拍手をした。
「みなさん、ありがとうございます。新婦のホノカさん、あなたも協力してくれますね？」
「ハ、ハイ！ モチロンです。そ、そしたら私はあっちにいますネ」
ホノカはとても緊張した様子で高砂の近くに向かった。
なぜあんなにも緊張していたのかは私にはわからないが、夫が誘拐されたとなれば、あんなに緊張するのも無理ないのかもしれない。

「では、さっそく暗号について説明しますね。暗号はいくつかのステップでできているようです。私のところに金庫が1つ、新婦のところにも金庫が1つあります。暗号を解き明かすと、金庫の中から次の暗号が手に入るようです。これを続けていき、最後のステップの謎を解き明かすことができれば、新郎がどこにいるかわかるようです。では、まずは暗号をみなさんに配布します」

突如友人の披露宴で起こった新郎誘拐事件。
果たして、私たちは無事に新郎を見つけだすことができるのだろうか？