ReNostalgia ストーリー 三月もそろそろ終わりそうな、とある日。 ぼくはぼんやりと、一年前のことを思い出していた。 === 卒業式の前日。 帰りの会では卒業アルバムが配られたこともあって、放課後の教室は、いつもよりざわざわしていた。 「永司はいつも自分の席にいるね。『自分の席が一番落ち着く』って言ってさ」 そんな中、クラスメイトの理乃がぼくの席にやってきて、ぼくの卒業アルバムを開くと、サラサラと何かを書き込んだ。 のぞきこんでみると、まっさらだった寄せ書きのページに、「学校は離れ離れになっちゃうけど、わたしのこと忘れないでね。またみんなで謎解きして遊ぼうね!」という、謎解き好きな理乃らしい一言が書き込まれていた。 ぼくの学校では、ほとんどのクラスメイトが地元の中学校に進学することになっていたけど、理乃だけは、小学校から少し離れた、私立の進学校に進むことが決まっていた。 勉強も運動も、ぼくよりもずっとよくできた理乃は、クラスの中でもちょっとした憧れの存在だった。 ぼくは、そんな理乃のことが、好きだった。 でも、それを認めるのはなんだか少し恥ずかしくて。 だから、学校は離れてしまうけど、連絡先も聞いたりはしなかった。 ぼくが卒業アルバムから目を離して顔をあげると、理乃はいたずらっ子みたいな顔をしてぼくを見ていた。 それでぼくはつい……、理乃に向かってこう言った。 「理乃の方こそ、別の学校に行って、もうぼくたちのことなんか忘れちゃうんじゃない?」 理乃は、それを聞いて、ちょっと目を丸くしてからこう答えた。 「そんなことないよ! じゃあさ、お互いのこと忘れないように、“約束”しよ!」 そう言って、理乃はもう一度ペンを持ち直すと、さっき書いたメッセージの下に、こう書き足した。 「来年の卒業式の日に、学校集合! 二人でまた遊ぼう! 約束だよ!」 === ……そして今日。 あれから一年がたち、その「約束」の日がやってきた。 次のページへ