ReNostalgia エンディング 「……また、あした」 いつの間にか戻ってきた教室で、ぼくは、理乃がつくった最後の謎の答えを呟いた。 その瞬間、教室の空気がふわりと動いた。 背後のカーテンが揺れた気配を感じて振り向くと、誰もいなかったはずの教室に、理乃が立っていた。 長い髪が、光を透かして揺れている。 「永司。今日は一緒に遊んでくれて、ありがとう」 その声を聞いた瞬間、胸の奥がじんとした。 さっき、6年2組の教室で会ってから、ほんの少ししかたっていないはずなのに、理乃の声が、どうしようもなく懐かしく、切なく感じた。 理乃は小さく笑って、言葉を続けた。 「久しぶりに一緒に遊べて、すっごく嬉しかったよ。永司にどうしたら楽しんでもらえるかなって、謎を考える時間も……すごく楽しかったんだ」 ぼくは何も言えずに立ち尽くしていた。 言葉にしようとすると、喉の奥がつまってしまう。 それから理乃は、「うん」と自分に言い聞かせるようにうなずいてから、ぼくをまっすぐに見つめ直して、こう言った。 「ねえ、永司。私、あの日、ほんとはね……」 「ほんとは、永司に“またあした”って言いたかったの」 理乃の声は、少し震えていた。 「ホームルームの後、“1年後にまた遊ぼう!”って約束したけど……。本当は、1年なんか待たずに、卒業した後も、別々の学校に行っても、たくさん永司と一緒に過ごしたかった」 「もし永司がよかったら、明日も、明後日も、ずっと一緒にいられるようになりたいなって……そう思ってたの」 理乃の目元が、潤んでキラリと光った。 「理乃…」 しんみりした空気をかき消すような声で、理乃が続ける。 「つまりね、そういうこと! あぁ……やっと言えた……っていうのかな……。ほんとは、あの日言いたかったんだけどな」 明るく話す理乃の声の奥に、かすかな震えが混じっているのを感じる。 ぼくは、涙がこぼれそうになって、急いで理乃から顔をそむけた。 「……ぼくも、理乃のことが、好きだったよ」 おずおずと理乃の顔に視線を戻すと、理乃はあの日みたいにちょっと目を丸くして、それから、今度は思いっきり目を細めて笑った。 「ほんと……? 嬉しい。ありがとう」 その言葉とともに、理乃の姿が少しずつ淡い光に包まれていく。 「もう時間かな。永司、約束通り来てくれてありがとう。じゃあ……また、あした。」 理乃はその言葉と共に、春の空気に溶けていった。 教室にはぼくだけが残った。 窓の外では、満開の桜が咲き乱れている。 ぼくはその場に立ちつくしたまま、静かに目を閉じた。 きっともうすぐ、ぼくも消えるのだろう。 でも、不思議と怖くはなかった。 ようやく、理乃との約束を果たせたから。 「こちらこそ、ありがとう、理乃。さようなら。また、あした。」 ぼくが言い終わると、カーテンが、最後にもう一度、ゆるやかに揺れた。 そして、やわらかな春の光に、何もかもが白く溶けていった。 終わり ▲画像を保存してシェアしよう クリア画像、外封筒のみシェアOKです! おめでとう! 見事に「ReNostalgia」を解き明かした! 謎を解き明かしたことをシェアしよう! アンケートはこちら 「ReNostalgia」 ディレクター/謎制作:南雲慶祐 永岡けい 謎制作協力/制作進行:和泉由香里 シナリオ協力:江坂果穂 デザイン:原耕造 イラスト:永尾裕美 校正:伊藤紘子 謎監修:大塚正美 「Mystery for You」 企画/制作:SCRAP プロデューサー:きださおり 田口正也 サービス運用:鈴木ひかる 與座日向葵 江坂果穂 広報:髙波由希帆 クオリティチェック:櫻庭史郎 パッケージデザイン:加藤咲 システム:株式会社メタップスペイメント エグゼクティブプロデューサー:飯田仁一郎 製作総指揮:加藤隆生