探偵たちと過ごす可笑しな放課後(2) 導かれたのは4桁の数字…… きっとこれが、箱の鍵を開けるための数字だろう。 「鈴木さん、謎が解けたよ。美術部で見つかった箱を見せてもらっても良い?」 ふわりがそう言うと、鈴木は喜んで美術部へと案内してくれた。 美術室に着くと、そこには先に2人の男女がいた。 そのうちの1人が、ふわりたちの来訪に気付き、声をあげた。 「あれ、ふわりちゃん? どうしたの?」 ふわりと目が合ったその女子生徒は、隣のクラスの円城寺だ。 そんなに話したことはないけれど、明るくて誰にでもフランクで親しみやすいタイプの生徒という印象だった。 「ちょっと美術部に用があって……」 「へぇ、そうなんだぁ。ゆっくり見てって〜」 笑顔の円城寺が左手をひらひらと振り、その動きに合わせて、ポニーテールが揺れる。 右手には筆を持っており、絵画を描いているようだった。 もう1人いた男性も、キャンバスに向かって猫背気味に座り、何かを描いていた。 「あ、堀内だ! ねぇ、何描いてるの…… わっ、めっちゃ上手!」 「いや、全然、練習用に描いてただけで……」 もゆるが親しげに声をかけるが、話しかけられた堀内は少し戸惑ったようにぼそぼそと声を漏らし、目線をそらした。 「えー、十分すごいよ! 私もこんなふうに絵、上手くなりたいなぁ」 笑顔でぐいぐい話しかける様子を見て、誰に対しても仲良くコミュニケーションを取れるという部分で、もゆると円城寺は似たようなタイプなのかも……。 ふと、ふわりはそんなことを考えながら、もゆるに向かって声をかけた。 「2人って、仲良かったんだ」 「そうだよ〜。実は誕生日が1日違いなんだよね。高1のときに同じクラスになったことがあって、堀内の方が1日だけお兄さんって偶然知ったんだよ。そこから話すようになったんだっけ。意外と長い付き合いだよね」 堀内はもゆるの言葉に適当に相づちを打つと、さっさと自身の絵に向き直った。 もゆるが言うような仲の良さはあまり感じられないが、初めて知った2人の接点にふわりが驚いたところで、鈴木が部室の奥から平べったい大きな箱を抱えて出てきた。 「お待たせ! これが、例の箱」 「あ、さっき部員だけで掃除してたときに見つけたやつ! もしかして、これを開けるのをダベり部に依頼しに行ってたの?」 円城寺が楽しそうに声を弾ませ、のぞき込んでくる。 「じゃあ、早速」 さっき導き出した4桁になるように数字錠を回すと、カチッと錠が外れる音がした。 中を開けると、そこには1枚の絵画が入っていた。 人物の横顔を描いたもののようだ。 上から何度も何度も絵具を重ねて描き直した跡が見えるが、顔のパーツが定まっておらず、まだ完成には程遠い状態のものだった。 「たぶんノートに書かれていた通り、過去に卒業した美術部の先輩が、未完の絵をこの箱に保管してたんだろうね。持って帰るのを忘れていたか何かで、部室に置かれたままになっていたものが、長い年月を経て掃除をきっかけに見つかった、ってところかな」 ふわりの言葉に、鈴木が少し困ったような顔でうなずく。 持ち主不在の描きかけの絵画……どう扱えば良いのか、美術部部長として考えているのだろう。 少しの間訪れた静寂を破ったのは、もゆるの言葉だった。 「これ、私がもらっても良いかな?」 驚いて、その場の一同が彼女の方を見る。 「なんか、気に入っちゃってさ。すっごく悩みながら描いた様子が伝わってくるっていうか……うん、この絵好きだな。持ち主が誰かわかんないままでどこに置くか困るようだったらさ、ダベり部に飾らせてほしいんだけど、どうかな?」 意外な申し出に鈴木は困惑しつつも、もゆるの真剣な様子に表情を和らげた。 「そう……ですね、ぜひもらってください」 こうして、事件は解決した。 ダベり部の部室には、美術部から借りたイーゼルに乗せられた、描きかけの絵画が飾られている。 ふわりは、余計なものをもらってきて…… ともゆるの突拍子のない提案に最初はあきれたものの、部室に来たときに絵画を見てふっと優しくほほえむ姉の姿を見て、まぁこれくらいの彩りが増えても良いか、と思うのだった……。 次のページへ