謎付き卒業証書 Epilogue-2
「ううん。もちろん、私が考えもしなかった方法で助けを呼んでくれたことには本当に感謝してるんだけど。実はもうひとつ…これは、確かめたかったことでもあるんだけどさ。」
「もうひとつ?」
「そう。私が体育倉庫で倒れてしまったとき。あのとき君が、私に語りかけてくれたこと。」
確かにあのとき私は、脚本のラストシーンのセリフを言うことで、つづきの意識を取り戻すことができた。
「私たちがこれから一緒に過ごす、未来について。カフェでアルバイトしたり、夏フェスに行ったり、“宅飲み”ってやつ?したりさ。……そんな未来の話を、君はしてくれた。」
スクラップブックの、最後のページの内容だ。
しかしあのときは余裕がなく、つづきが私にしてくれたように多くを語りかける時間はなかった。日付と名前を呼びかけ、あのセリフを言っただけだ。
こちらの表情を読み取ったのか、つづきは話を続ける。
「そうだよね、火の手が回って時間のない中だったから、君が実際に話してくれた内容ではないんだろうね。でも、君が私の名前を呼んでくれたとき、私はそれを確かに体験したんだ。夢を見ていたようなものかもしれないけど…。でも、そうやって未来の希望を忘れずにいられたからこそ、最後に目を覚ますことができたんだと思ってる。だから、そのことに、ありがとうを言いたくて。こんなことがあったんだよって、伝えたくて。でもちょっと恥ずかしくてさ、こんな手の込んだことしちゃった。」
疑問は解けたが、そんなことはもはやどうでもよかった。
あの日、薄れた意識の中に鳴り響くつづきの声は、藤山高校で過ごした大切な記憶のことを、思い出させてくれた。
そして、つづきの薄れた意識の中では、自分の声が、これからすごす大切な未来のことをイメージさせていた。
偶然、あるいは奇跡。これをどう呼ぶかもなんだっていい。
二人の友情が、想いが、互いの命をつないだということ。
そのことをより一層強く、知られたことが何より嬉しかった。
「つづきのバイト先のカフェか。早く遊びに行きたいな。」
「ちょっと恥ずかしいけどね。というか、気が早いよ!」
つづきが笑う。
「つづきが体験した未来のこと、全部本当に実現させようね。それ以外にも、たくさん。まだまだ、思い出はたりてないよ」
「うん、もちろん。これからもよろしくね。」
そう言うと、つづきはカバンを開けて、卒業証書のケースを取り出した。
中を開けると、二人分の卒業証書が入っている。
そこから1枚を取り出し、大げさな身振りでこちらに差し出す。
つづきと目が合う。互いに笑顔になる。
「「卒業、おめでとう。」」


