忘れ雪の君をさがして 謎付きクリアファイル3
『私の告白は叶わない』
これが、白ちゃんが作った脚本のタイトル。
少し後ろ向きなタイトルだけど、キラキラしただけでない青春を切り取ったこの短編映画には、ふさわしいタイトルなのかもしれない。そう思った。
外を見ると、だいぶ夜も深まってきた。宿題も終わらせないといけない、親はもう帰ってきたのかな。
そうやって考えつつ、暗号と宝箱をカバンにしまい直した。
その夜、布団に入ったときふとタイトルを思い出した。
「私の告白は叶わない」、あの内容にはピッタリのタイトルにも思えるけど、このタイトルを考えたのが白ちゃんっていうのが少しピンとこない気もする。
それに、なんで今回は暗号のためにわざわざ脚本があったのだろうか。
明日、学校で白ちゃんに会ったときに解けたことを伝えよう。それと、今回なぜ脚本を使った暗号にしたかも。
そう決めて、目を閉じた。
次の日、白ちゃんと話せたのは放課後になってからだった。白ちゃんが休憩時間もどこかへ出かけていたり、誰かと真剣に話していてあまり話しかけられなかった。
今も少しバタバタしている。どうやら、予定があって早く学校を出ないといけないらしい。
「白ちゃん、暗号解けたよ。」
私は、脚本と開いた宝箱を手に話しかけた。白ちゃんは、手を止めこちらを見た。
「お、本当に? タイトル、わかった?」
白ちゃんは、この宝箱を渡してきた時と同じような照れた顔で言ってきた。
「うん、タイトルは『私の告白は叶わない』でしょ?」
そう伝えると、白ちゃんは少し不思議そうな顔をした。そして、私の手の中の脚本を取りパラパラと見はじめた。
しばらくして白ちゃんはフッ、と小さく微笑むと脚本を私に返して、帰り支度に手を戻した。
「どうしたの? タイトルが違っていた?」
そう聞くと白ちゃんはこっちをチラチラ見つつ答えた。
「アキラのセリフで変更があるかもって書いてあったセリフあったでしょ?
”自分から動き出すことは怖い。だから、無理しなくてもいい。”ってとこ。その脚本で言うところの6ページ。
そこのセリフ、こう続くの。
”自分から動き出すことは怖い。だから、無理しなくてもいい。でも、アイが踏み出す勇気を選ぶのなら僕はそれを止めないさ”、ってね。」
白ちゃんの顔は少し嬉しそうにも見える。
「一番好きなセリフなんだ。ここを描きたかったんだ、って思えた。」
「うん、そうなんだ。」
私は、少し困惑気味だった。白ちゃんは、身支度を終えカバンを肩にかける。
「あ、それと!
”重要”って書かれたチャイム、あれは学校のチャイムじゃなくて駅で流れる発着を知らせるチャイムの事だよ!」
そう言って、白ちゃんは去っていった。
あ……。
結局、質問の答えは返ってこなかった。
けれど、私は気付いた。
本当のタイトルは、別にある。
※2人の会話を手がかりに、脚本の本当のタイトルをつきとめよう。