呪われた廃工場からの脱出 解説 仕分け室以降
仕分け室に入ったあなたたちは、「おにいちゃん」のかくれんぼが始まると同時にお札の貼られた場所に隠れ「もういいかい?」と尋ねられるタイミングを待った。
「もういいかい?」
「おにいちゃん」のその声をきっかけに、あなたたちは「もういいよ」と返答する。
「これで、おにいちゃんは消えるはず」
…しかし「おにいちゃん」が消えることはなかった。
「どういうことだ!」
パニックになるあなたたちを尻目に「おにいちゃん」は一つのロッカーの前に立つと、中をのぞき込みこう言った。
「みぃつけた。」
ロッカーにかんぬきをし、中に入ったあなたの仲間が逃げられないようにすると、おにいちゃんはどこかへ消えていく。そして、どこからかともなく「おにいちゃん」の声が聞こえてきた。
「「もういいよ」はエリの声じゃなきゃダメだ。」
あなたたちは、ロッカーを飛び出し、仲間を助けるため、かんぬきがかけられたロッカーに駆け寄り、ロッカーを開けた。
しかし、そこに仲間の姿はない。ロッカーの背面が老朽により外れており、そこから光が差し込み、奥の道が見える。
「このロッカー、壊れて完全な密室ではなかったんだ…!」
おにいちゃんはお札が貼られている扉に触れることはできない。
おにいちゃんに追い詰められた人たちは、お札の貼られた場所へと逃げ込めば、扉を開けることができないので、おにいちゃんから逃げることができていた。
しかし、このロッカーだけは朽ちて背面が取れていたことで、運悪くここに逃げ込んだ人は後ろからおにいちゃんに連れ去られてしまったのだ。
あなたたちは、その道から仲間を追いかける。
懸命に探していると、倉庫の中から仲間の声が聞こえてきた。
急いで倉庫の中に入ると、仲間は慌てながら
「もういいよ、はエリの声じゃないとダメだった。あと3分後に「おにいちゃん」が殺しにきちゃう!」
と言っている。
いつの間にか扉が閉ざされ、倉庫の中から出られない状況で、
「エリの声で「もういいよ」をおにいちゃんに聞かせる方法」
を実行しなくてはいけない。一体どうすればいいのか。
その時、あなたたちは思い出す。
この工場の中で、生前のエリの声を聞いたことを。
そう、宿直室の留守電にエリの声が残っており、その話し声の中に「もういいよ」という言葉があった。
同じように留守電を再生すれば…と思うが、どうやら電話は電源が入っていない。
見ると、電源ケーブルの先は壁の中へ入っている。
あなたたちは、電気室と同じようにケーブルの先を見つけ出し、電話を繋ごうとする。
しかし、よりにもよってケーブルの長さが足りない。
どうにかして電源をつなぐ方法はないか、そう考えた時、作業室Bで読んだ手記に書かれた、ある言葉を思い出す。
「俺もあんな風に絞め殺されるってことか?」
そう、この工場にあった死体はすべて、おにいちゃんによって絞め殺されていたのだ。
であればここにいる死体もきっと…。
見てみると死体は延長ケーブルで絞め殺されていた。
あなたたちは死体から延長コードをほどき、エリの声を再生できるように準備する。
そして、3分後。
「おにいちゃん」が「もういいかい?」と言いながら、
倉庫にやってきたタイミングで、電話をかけるとエリの声で「もういいよ」と声が流れた。
うめき声を上げながら、もだえ苦しむ「おにいちゃん」。
束の間のあと「おにいちゃん」の姿は消えてなくなった。
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廃工場を出たあなたたちは、どこで聞きつけたのか、新聞記者に囲まれて取材を受けていた。記者が言うには、エリはこの工場で1週間も見つからずにいたらしい。エリを愛していたお父さんは、きっと必死で彼女を探していたことだろう。工場でみつかったことを知ったお父さんの心中は、いかばかりだろう。
「エリのお父さんはどうされているんですか?」
記者に訪ねると「今、人々の助けを得て、ひっそりと暮らしている」と教えてくれた。
それを聞いたあなたたちは胸を撫でおろしつつ「私たちは、幼くてして亡くなった彼女に呼ばれてここに来ました。彼女の無念を晴らすことができてよかった。これで少しでも安らかに眠ってもらえたら。」そんな風に記者たちに答え、廃工場の入り口に花を手向け、手を合わせた。
その時、ふと疑問がよぎる。
それにしても、なぜエリの想像上の人物だった「おにいちゃん」が私たちに見える存在として現れたのだろう。
しかし、あなたたちはそこで考えることを止めることにした。
「エリは、願い通り成仏できたのだ。それで良かったじゃないか。」
合わせた手を離し、立ち上がると廃工場を後にした。
真実を明かすことが全てではない。
この世には、解かなくていい謎もあるのだ、と…。
呪われた廃工場からの脱出 END