狐の嫁入り ストーリー
謎を解くと「はなよめ」という言葉が導き出された。
ようこはしばらく首を傾げたあと、ハッとして胸の前で手を打った。
「美雨お姉ちゃんだ! 花嫁姿のお姉ちゃん」
目をつぶると、あなたの心の中にも風景が浮かんでくる。
しとしとと天気雨が降る中を、花嫁姿の美雨がゆっくりと歩いていく。ようこは、親戚のおじさんたちと一緒にその後ろをついていく。花嫁行列だ。ようこは美雨の後ろ姿をじっと見つめていた。
「みんなで弓曲川(ゆまがりがわ)沿いを神社まで歩いたんだよ。途中、赤い橋を渡ってね。花嫁衣装のお姉ちゃん、綺麗だったな。結婚相手もとっても素敵な男の人だった」
「そうだ。それから数日後に、あたしはこの神社でやってた夏祭りに行ったんだ」
夏祭りの風景がぼうっと浮かび上がった。
射的や輪投げ、金魚すくいの出店が並び、揺れるちょうちんの下で、人々が盆踊りをしているのが見える。
「何かの景品でこの狐のお面をもらったのかな。すごく暑い日でね。あたしは暑さで具合が悪くなって、境内の石段に座って休んでいたの。そしたら、そうだ。ハジメに会って……」
ハジメは最初「妖狐が狐のお面かぶってら」とからかったが、ぐったりとしたようこの様子を見ると、すぐにそばの井戸から水を汲んできて、ようこに飲ませてやった。
「具合悪いのか。姉ちゃんと一緒じゃないのか?」
「うん。……美雨姉ちゃんはお嫁に行っちゃった」
「そうか。だから今年は一人なのか」
「え?」と、ようこが顔を上げると、ハジメは顔を真っ赤にした。
それからようこの隣に座り、持っていたうちわを扇ぎ始めた。
心地よい風がようこの首元をなでる。
「それから、あたしたちは二人で盆踊りを眺めてた。その間、ハジメは何も言わずにずっとうちわを扇いでくれたんだ」
しばらくして、ようこは、もう大丈夫と言って立ち上がった。するとハジメはうちわを置いて、逃げるように走り去った。ようこは狐のお面をかぶり、遠ざかっていくハジメの後ろ姿ずっと見つめていた。小さな胸がトクトクと鳴っていた。
「あたし、ハジメのことが好きだったのかなぁ。でも……」
ようこはうつむいた。
「あの後、なにか大事なことがあったような気がする。夏祭りの風景であたしが見たものを思い出せば、何かがわかると思うんだけど……」
少女の記憶・四の謎を解き、現れた言葉を入力しよう!