Mystery for You あるアイドルグループの解散 ストーリー3
「国民的アイドルグループ TATSUMAKI 本日ついに解散!」
楽屋に入ると、そんな見出しが踊るスポーツ新聞がテーブルに置かれていた。
誰かもわからない、存在すらしないかもしれない「とある関係者」が激白した…とされるウソかホントかもわからない内容が、あたかもすべて真実のように書かれているのだろう。もう目を通す気すら起きない。
ソファーに腰を落とす。
「なんで、こんなことに…」
1か月前。
コウジが、違法なクスリを所持していたということがわかり、逮捕された。
まさか、そんなハズはない。
真面目なコウジがそんなものに頼るわけがない。
絶対に何か事情があるはずだ!
俺はその報告のためにきたマネージャーに詰め寄った。
それをしても何の解決にもならないことはわかっている。ただ、衝動が抑えられなかった。
数日後、マネージャーから、コウジは友達から「海外で流行っているサプリ」だと言われてもらったものだったと証言していること、そして、まだ使用しておらず、検査でも反応は出なかったと言われた。
俺はすぐに、
「当たり前だ」
と、淡々と報告をするマネージャーに、そう言い捨てる。
それに対して、マネージャーは
「…真実はわからないけどね」
と答えた。
この数日間、寝ずに報道の対応、スポンサー対応などをし続け、憔悴しきったマネージャーのその答えに、俺はなんだかすべてが終わった気がした。
ユウヤが創作活動をするためにグループ活動を休みたいと知り、真剣に向き合ってきた。マネージャーや事務所とスケジュールを調整し、ユウヤが少しでも自分の時間が取れるように、そして俺とコウジはユウヤの抜けた穴を埋めるように、今までユウヤがやってくれていた仕事も馴れないながらこなしていたし、それなりにできていた。
「あのさ、シンゴ…俺さ…」
「なんだよコウジ! これからバラエティ収録だぜ! 元気出していけよ! ユウヤのためにさ、頑張ろうな!!」
「…あぁ、そうだな」
あの日、少し想いを隠した感じの返事に、コウジの心の変化に気付いてあげられなかった。コウジは男気あるキャラだと世間では認識されていたが、本当は繊細で真面目なヤツだった。人一倍緊張しいで、台本のないバラエティでは、セットの裏で震えていた。
「…想いがあったのはユウヤだけじゃないのに…」
でも、俺はこの日を待っていた。
きっとまた、あのファンレターが届いているはずだ…!
願うようにスポーツ新聞をゆっくりとどかすと、そこにはやはり新聞で隠れていた「シンゴくんへ」と書かれた1通の封筒が出てきた。
急いで俺は封筒を開ける。
「TATSUMAKIが解散するなんて信じられません。
この状況をなんとかできるのはシンゴくんしかいません。
シンゴくんに、時間を巻き戻すおまじないを教えます。
この状況になった原因を元に、おまじないをして、
シンゴくんの「すべきだったこと、したかったこと」が、
わかったとき、あの日に戻ることができます。
もう一度、解散を止めてください。
あなたたちのファンより」
ユウヤのときのように、もう一度…。
もう一度?
手紙の中には確かに「もう一度」と書かれていた。
今はそれどころではない、今回の原因は「クスリ」…
もう一度おまじないをして、あの日に戻らなくては…!
<おまじないをして、あのときの「すべきだったこと、したかったこと」を見つけよう>