Mystery for You あるアイドルグループの解散 ストーリー5
「国民的アイドルグループ TATSUMAKI 本日ついに解散!」
楽屋に入ると、そんな見出しが踊るスポーツ新聞がテーブルに置かれていた。
誰かもわからない、存在すらしないかもしれない「とある関係者」が激白した…とされるウソかホントかもわからない内容が、あたかもすべて真実のように書かれているのだろう。もう目を通す気すら起きない。
ソファーに腰を落とす。
「俺は何を間違えたんだ…」
2か月前、ユウヤの本心を知り、ユウヤの望みを叶えるため、コウジと2人でスケジュールをこなした。
1か月前、コウジの本心を知り、相談を重ねた。
2人の気持ちをよく理解し、それを叶えるようにしたつもりだった。
なのに、今また、解散の日を迎えている。
楽屋に2人はいない。
なんなら、今日の最終回の収録にすら参加していない。
ユウヤもコウジもアイドル活動より大切なものを見つけた。
それは、理解したし、心から応援したいと思った。
しかし、その結果、ここに2人がいないのは…違うよ…。やっぱり、違うよ…。
無駄に広い楽屋に1人。
芸能人はいつでも孤独なんだ。
でも、俺たちはいつでも3人だったから、ずっとつながっていたから頑張ってこれた。
俺は俺のことを差し置き、2人を、グループを優先してきたのに。
「何で、こんなことに…」
俺は何をしたかったのか。俺はどうなってほしかったのか。
広い楽屋は寂しくて仕方なかった。
これまでと同じように、新聞をどかすと「シンゴくんへ」と書かれた1通の封筒が出てきた。
封を開ける。
「TATSUMAKIが解散するなんて信じられません。
この状況をなんとかできるのはシンゴくんしかいません。
シンゴくんに、時間を巻き戻すおまじないを教えます。
この状況になった原因を元に、おまじないをして、
シンゴくんの「すべきだったこと、したかったこと」が、
わかったとき、あの日に戻ることができます。
シンゴくんはどうなりたかったんですか?
「誰」と向き合うべきだったんですか?
あなたたちのファンより」
「原因ってなんだよ…。今回の解散の原因は何なんだよ!!!」
手紙を強く床に叩きつける。
新聞には「方向性の違い」「不仲説」「事務所との軋轢」「理解が足りなかった」…。
憶測だけで書かれた外野の適当な文字が並ぶ。
違う、全部違う…。
俺たちは理解しあっていた。
わかりあっていた。
ユウヤの気持ちも尊重した、コウジの気持ちも尊重したじゃないか!
なのに…なのに…。
そのとき、気付いた。
そもそも、なぜ解散になったのか。その原因に。
<おまじないを解き、あのときの「すべきだったこと、したかったこと」を見つけよう>