Mystery for You 七夕荘の隠しごと エンディング
あなたはみーちゃんの短冊に隠された願いを、弥彦さんに伝えた。
弥彦さんはしばらく黙っていたが、「わかった。ありがとうな、3号さん」と言って電話を切った。
そして誕生日当日。
あなたは「大家さんから鍵を借りたから、4号室を見てみよう」と言ってみーちゃんを誘い出した。弥彦さんに頼まれてのことだった。
鍵を開け、ドアノブに手をかけるみーちゃんは緊張している。
まさか中でパーティーの準備がされているとは思ってもいない様子だ。
意を決してドアを開けたみーちゃんに向けて、パン、パン、とクラッカーが飛ぶ。
「みーちゃん、誕生日おめでとう!」
アパートのみんながみーちゃんを迎えた。
「なんだよ、お父さんも、みんなもいる! 3号さんも知ってたの?」
みーちゃんははりさけそうな笑顔で聞いた。
「ミカコ、ナイショにして悪かったな」
弥彦さんは照れくさそうに頭をかいている。
「でもな、お前も隠しごとしてただろ?」
「え? あたしは隠しごとなんてしてないよ」
「後ろ、見てみな」
不思議そうな顔でみーちゃんが振り向く。
玄関先に立っていたのは、みーちゃんのお母さんだった。
「ミカコ……」
何か言おうとしたお母さんに、みーちゃんは抱きついた。
みーちゃんが本当に欲しかったもの。
それは元どおりの家族3人の時間だった。
みーちゃんは決して声をあげて泣かなかった。でも、お母さんを強く抱きしめる、その小さな背中が震えていた。
楽しいパーティーはあっという間に終わってしまった。
お母さんはみーちゃんのうちに泊まって、明日の町内会七夕祭りも3人で行くことになった。
両親がやり直せるかはわからない。けれど、一年に一度、七夕の日は両親が一緒になってみーちゃんの誕生日を祝う約束をしたそうだ。
その翌日、あなたのポストにみーちゃんのメモが入っていた。
うそやかくしごとは大きらいだけど、3号さんのうそはすきだよ。
ありがとう!
あなたは玄関横の窓を開け、空を仰ぎ見た。
長かった梅雨もそろそろ明けそうだ。