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SPECIAL INTERVIEW
『逃げ上手の若君』原作者 × リアル脱出ゲーム生みの親
「逃げる」と
「脱出する」窮地を切り抜けることは
なぜこんなにもおもしろい?
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「逃げる」ことを武器に、幾度となく危機をくぐり抜けていく北条時行。その生き様を描く『逃げ上手の若君』。
そして、閉ざされた状況の中で謎を解き、仲間と知恵を絞り、自らの力で「脱出」を目指すリアル脱出ゲーム。
「逃げる」と「脱出する」。そこには、目の前の状況を読み、考え、選び、窮地を切り抜けていくという共通のおもしろさがある。
『逃げ上手の若君』を生み出した漫画家・松井優征と、リアル脱出ゲームの生みの親・加藤隆生。リアル脱出ゲーム『鬼々迫る戦場からの脱出』の開催を記念して、ふたりのクリエイターが、窮地を切り抜けることのおもしろさから、物語と体験を生み出す発想までを語り合う。
リアル脱出ゲーム『鬼々迫る戦場からの脱出』の開催を記念して実現した、ふたりのクリエイターによる特別対談

CONTENTS目次
『逃げ若』の構想を思いついたとき、すぐに加藤さんの顔が浮かんだ
松井先生と加藤さんはプライベートでも親交があるそうですね。おふたりが出会ったのはいつ頃ですか?
たしか、明治神宮野球場でおこなった公演に松井さんが参加してくださったんですよね。それで、担当編集の方から「一度食事しませんか」とご連絡いただいて。すぐに「印税どれくらい入ってるんですか」と聞いたことだけは覚えています。それで打ち解けました。
そんな話しましたっけ(笑)。その後すぐにコラボの話になったのかな。10年以上前のことなので、もううろ覚えです。
リアル脱出ゲームをつくる前に、『暗殺教室』の単行本巻末に謎を仕込むという企画をしたんですよね。「パズルの時間」という名前で、5巻(2013年発売)から9巻(2014年発売)まで載せてもらいました。そこから『暗殺教室からの脱出』(2014年開催)、『暗殺教室からの脱出2』(2016年開催)と次々コラボさせていただいて。
そうだ、単行本の打ち合わせで、「こうやって謎を作っていくんだな」と刺激を受けたことを覚えています。それから加藤さんには友達を紹介してもらったり、家に呼んでもらったりと仲良くしていただいています。実は、逃げ若の構想を思いついたとき、すぐに加藤さんの顔が浮かんだんですよ。「なんてリアル脱出ゲームに向いた作品だろう!」って。

僕も、「こんなに相性がいい作品を描いてくださってありがとうございます」と思いました(笑)。実際、連載が始まった翌週にLINEで連絡取り合いましたよね。「これ絶対ヒットしてくださいね」って。
加藤さんは『逃げ上手の若君』の物語や展開にどんな感想を抱きましたか?
『魔人探偵脳噛(がみ)ネウロ』『暗殺教室』の2作品は、日常生活の中にひとつ別ルールを持ち込んで、それを徹底的に掘り下げるというものでしたよね。それが松井さんの真骨頂だと思っていたので、「あれ、歴史モノに行くの!?」とびっくりしました。たぶん、日本中のファンが同じことを叫んだと思うんですけど。
でも、歴史モノの中にもやっぱり、「逃げる」というひとつのルールを持ち込んで、それを貫いているんですよね。この人は本当に、狭い方、狭い方へ行くんだな、たぶんなんでもできちゃうから、狭くしないと描き始められないんだな、かわいそうに。……と思いました。
たしかに、自らスーパーハードモードを選んでいる感はあります(笑)。
そうだ、最初にお伝えしておくと、僕、単行本派なんで。今日、絶対にネタバレしないでくださいね。
やばいな、俺もう気が緩んじゃって、結末を前提に喋りがちで……。
ダメです、絶対にやめてください。最終巻を読むのを楽しみにしてるんですから。
「逃げる」主人公はなぜおもしろいのか
そもそもなんで逃げることが得意な主人公を描こうと思われたんですか?
時行を主人公に据えて物語を組み立てていたら、編集者から「何かが足りない」と言われたんです。でも、強さを足すと嘘になっちゃう。だって、そんなに強かったなら歴史に残っているはずじゃないですか。
なるべく歴史に嘘をつかずに何かを足すにはどうするか。「じゃあ、何度も逃げまくっているわけだから、“逃げ上手”というキャラクターにしよう」と思いました。負けが多い武将なので、戦そのものをゴールにすると読んでいてストレスになってしまいます。でも、「逃げ切る」ことをゴールにすると、戦に負けても逃げることさえできればカタルシスになる。
歴史は勝者が作ると言われるし、物語も勝った方を主人公としたほうが描きやすい。けれど、逃げることに変態的な喜びを感じる少年であれば、負けた側であってもおもしろく描くことができるだろうと思いました。
時行を選んだのはどうしてですか?

時行は、いわゆる貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)※1の王道を行く人物なんですよね。復讐を目的に、高貴な血筋の人物が俗世をさまよう。それだけでモロ少年漫画になるんです。しかも、歴史上の人物ってみんな世に出る頃にはもうおっさんになっているんですけど、時行だけは10代で乱を起こしています。少年漫画の主人公として最適な年齢のときに活躍している。こんな武将、ほかにいません。

ちなみに、大河ドラマの『太平記』には、時行は名前しか出てきませんでした。登場したら視聴者が「なんで子どもが出てくるんだ?」と疑問に思って、ノイズになると判断したんじゃないかな。それくらい、「少年が武将であること」は異質なことなんです。でも、少年漫画ではそこが最大の魅力になるんですね。ここに勝ち目があると思いました。
「強さ」ではなく、「逃げる能力」を武器にすることの難しさはありませんでしたか?
いや、「逃げ切れば勝ち」というルールを一度読者にわかってもらえたら、あとは意外と簡単でした。それに、「より強くなった方が勝ち」という展開はもうやり尽くされていますよね。そこに新たな要素を足す方が難しい。「逃げ切れば勝ち」はブルーオーシャンなので、そのまま組み立てれば成立するんです。
逃げるという一見ネガティブな行為を、読者が「かっこいい」「おもしろい」と感じられるようにするために、意識したことはありますか?
ひとつは、逃げるときのポーズ。ひらひらと逃げる、おもしろい動きをたくさん盛り込みました。あとはもう、逃げることを心から楽しむ様子ですね。「心から楽しんでいる変態には誰もかなわない」ということをひとつのテーマに据えて、さまざまな“変態”が楽しむ姿を描き、楽しむことそのものが強さに結びつくようにしました。

弱点は、やり方次第で強みに変わる
おふたりには、ご自身の弱みが、結果的に強みになった経験はありますか?
「弱点こそ強みになる」というのは、『魔人探偵脳噛ネウロ』や『暗殺教室』の頃からずっと大事にしているテーマです。たとえば自分は引っ込み思案で人の顔色ばかりうかがっているような人間なんですけど、それによって人の細かな表情や息遣いから本音が読めたりするんですよ。担当と打ち合わせするときも、返答が0.1秒早いか遅いかで真偽を見極めたりして(笑)。
謎解きも、ぶっちゃけるとめっちゃ苦手です。思考に瞬発力がなくて、じっくり熟考するタイプなんですね。だから、オンラインで時間制限がなかった『封鎖された人狼村からの脱出』は割と好成績でした。

会話も同じで、みんなの話に乗り遅れるんです。話題に対して話したいことが思い浮かんだときにはもう次の話題に移っている。学校生活ではそれが「輪に入れない」という弱点になったけど、漫画家になったら「作品がおもしろくなるようじっくり考えられる」という強みになりました。
僕はゲームを作ることに強い憧れがあったけど、プログラミングとか技術全般が苦手だったので、それがすごく高い壁として立ちはだかっていて。技術がなくてもエンターテインメントを作るためにはどうすればいいか5年くらい考え続けた結果として、リアル脱出ゲームという抜け道を見つけられたんです。
「やりたいことがあるけど、そのために必要なものを自分は持っていない」という状況を覆すには、アイデアが必要ですよね。だから、そういう状況って実はチャンスなんだと思っています。いまも「これをやりたいけど現在のうちの会社では無理だ」という状況になると、すごくテンションが上がります。
適切な悔しさは、良きエンターテインメントになる
時行たちは度々窮地に追い込まれて、読者は「ここをどう切り抜けるんだろう」と引き込まれますよね。魅力的な窮地をつくるために意識されていることはありますか?
まず先に、「どうかっこよく逃げるか」というアイデアをたくさん頭の中に蓄えておくんですよ。大前提として、大まかな展開は歴史によって決まっています。歴史の1つひとつの局面に対して「どうかっこよく逃げるか」を当てはめていき、それに合わせて途中の窮地を細かく調整する。そんな流れで展開を考えていましたね。
ただ、少年漫画では窮地がずっと続くと票が落ちちゃうんです。だからなるべく窮地はコンパクトに、かつ強烈にするように心がけています。でも、逃げ若は最終的には「逃げ切れば勝ち」なので、読者も安心して読んでくれていたんじゃないかと思います。
加藤さんはどうですか?

魅力的な窮地をつくるという意味では、「想像よりも悪いことが起きる」ことかな。そもそもリアル脱出ゲームのチケットを買ってもらうためには、良い窮地の設定が必要です。「人狼村に閉じ込められる」とか。でも、その設定に惹かれてやってきた人が「こうなるんでしょ」と思っているものよりもさらに悪い状況に陥る。これがすごく重要だと思います。
リアル脱出ゲームでは、窮地を切り抜けられず、脱出に失敗することもありますよね。それでも参加者が「楽しかった」と思える体験にするために、気をつけていることはありますか?
2つあります。1つは、物語体験そのものに十分な価値を感じてもらえる構成にすること。物語の中に入り込めていれば、謎が難しくて解けなくても楽しめると思うんですよ。2つめは、謎が解けなかった人が納得できること。「なんだよ、こんなの解けるわけないじゃん」となったらそれはこっちの不始末です。解けなかった人も「うわ、絶対次は解くぞ」と思って、その日のうちに次のチケットを買ってしまう。そうなったらこっちの勝ちですね。
適切な悔しさを持って帰ってくれたら、それは良き体験になるし、良きエンターテインメントになる。さっき松井さんが言っていた「戦には負けているけど、時行自体は逃げ切ったから勝ち」という考え方とかなり近いと思います。
いまの「納得できる」という点で言うと、漫画では敵側はちょっと不思議な能力で窮地を切り抜けてもいいんですよ。実際、逃げ若の中で足利尊氏はそれをやっています。でも、味方側がそれをやると読者は冷めてしまう。ちゃんと、自分の能力で切り抜けないといけないんです。窮地からの逆転の仕方は、敵・味方で使い分けるようにしています。

「普通の人」が、突然ヒーローになる
時行は、自分にできることを見極めたり相手の隙をついたりと、身体的な強さではない部分で窮地を切り抜けていきます。リアル脱出ゲームでも、頭の回転が早い人や謎解きが得意な人だけが活躍するわけではなく、誰かの何気ない気づきがチームを救うことがありますね。
リアル脱出ゲームという仕組みを考えたときから、勉強ができるとか知識があるとか以外の頭脳戦を作りたいと思っていました。だから初期の頃は、ちょっと意地悪な人が気づける謎、好奇心がある人が気づける謎、ルールを信用しない人が気づける謎、といった具合に、いろんな性格特性をかみ砕きながら謎をつくっていた気がします。最後の大きな謎は解けなくても、探索で何かを発見することでチームに貢献したっていいわけですから。
要は、リアル脱出ゲームを「高学歴のためのゲーム」にはしたくなかったんですよ。でも、チームの中に謎解き偏差値が高すぎる人がいて、その人が1人で全部解いちゃうということは実際に起きているので、そこでみんなが楽しめるためにどうすればいいか、ずっと悩んでいますね。
自分は普段から推理小説を最後から読むタイプなので、謎解き上級者にすべての謎を解かれてしまっても楽しめたし、むしろ解けたときの展開や演出を味わえてお得だなと思いましたね。
それこそ、とあるリアル脱出ゲームに参加したとき、チームの中に高齢の女性がいたんですよ。だけど、ゲームが始まったらその方がすごい勢いで謎を解いていって、「おばあちゃん、カッケェ!」って盛り上がって。
リアル脱出ゲームって、普段の生活とはまったく違うところで、その人がいきなりヒーローになることがあるんですよね。そういう姿を目の前で見ることができて、すごい興奮しました。
そう思ってもらえるのはありがたいですね。『鬼々迫る戦場からの脱出』もそうですが、謎を解き足りない謎解き上級者のために追加の謎を用意しているイベントもあるんですよ。僕自身は、「ひとつのアイデアですべての人を楽しませたい」というこだわりがあるのでなるべくやらないようにしていますが、今回のイベントでは謎解き初心者から上級者までみんなが楽しめるようなすごくいいバランスになっていたんじゃないかなと思いますね。
1つのアイデアを、最後まで研ぎ澄ます
加藤さんのつくるイベントって、本当にワンアイデアにこだわりますよね。
そうなんです。たとえば、「射的で謎解きをつくろう」と思いついたら、最後まで絶対に射的にこだわりたいんですよ。途中で射的と謎を絡めるのが難しくなって後半は出てこない、みたいなのは嫌なんです。タイトルに偽りありはダメ。ワンアイデアで楽しませる気持ちでつくらないと、そのアイデアが研ぎ澄まされませんから。
そこは漫画も一緒ですね。よく新人漫画家に「読者は“奇抜な設定”そのものではなく、“その設定を活かしたアイデア”にお金を払うんだ」 と言っています。

漫画もリアル脱出ゲームと同じく、幅広い人が楽しむエンターテインメントですが、さまざまな年代の人を楽しませるために意識していることはありますか?
『週刊少年ジャンプ』がなぜ一番売れているかというと、厨二病(ちゅうにびょう)に向けて書いているからだと思っています。男はもう、中二を超えたら死ぬまで厨二病なんですよ。だから厨二病の心をくすぐるように描いておけば、中年まで間違いなく楽しませられる。
でも、「この展開に少年はまっすぐ驚いてくれるだろうけど、中年はあれこれ先回りして考察しているから驚いてくれないだろうな」と悩むことはありませんか?
それはちょっとありますね。ネットで先に考察を上げられちゃうと驚きが減ってしまうので、予定していたヒントや伏線を入れられないというジレンマは感じます。一方で、ショート動画などを観る人が増え、物語を読み取る力が落ちているのかなという気もしています。読者を批判するつもりはまったくなくて、作り手側が時代に合わせて変化しないといけないと思っていますが、その調整は悩むところですね。
物語を見る側から、自分で選ぶ側へ
漫画では、読者は1歩引いた立場から「時行はこの窮地をどう切り抜けるんだろう」とハラハラしながら見守りますよね。一方リアル脱出ゲームでは、自分自身が考えて行動しなければ物語が進みません。物語を見る側から、自分で選ぶ側になることには、どんなおもしろさがあると思いますか?
それで言うと、僕はものすごく本を読む少年だったんです。でも、途中で読めなくなっちゃったんですよ。
あっ、一緒だ! なんで読めなくなったんですか?
登場人物たちが羨ましすぎて。
全然違った! 俺は年齢が上がって、手に取る本に挿絵が無くなったから読めなくなったんです。ときどき入る挿絵を励みに読んでいたから。すみません、続けてください。

たとえば『ズッコケ三人組』シリーズを読んでいても、こんなにおもしろいことは自分の生活に絶対起きないじゃん、と悲しくて悔しくて。物語がおもしろければおもしろいほど、悲しい気持ちになって読めなくなったんですよ。
そんなときに出会ったのがドラクエでした。小学5年生のときですね。それまでは本に出てくるキャラクターを応援することしかできなかったのに、自分で動かせるようになった。このことにものすごい衝撃を受けたんです。革命だと感じました。
リアル脱出ゲームはその延長線上にあると思っています。僕の中では、第1世代は心の中でキャラクターを応援するだけだった。第2世代はキャラクターを自分で操れるようになった。そして第3世代は、自分自身が物語の中に入った。それがリアル脱出ゲームの一番の醍醐味ですね。
自分は本当にポンコツなんで、自分ひとりでは最初のステップも突破できず、映画を観ているのとあまり変わらず、ただただ「すごいな」と翻弄されるだけで。でも、それでも楽しいのがリアル脱出ゲームなんですよね。リアル脱出ゲームに参加したことがある人ならわかってもらえると思うんですけど、反省会が一番楽しい。そこまで考えて設計してくれるのかなというくらい、謎が解けない人へのケアが行き届いているなと思います。
松井先生はリアル脱出ゲームの中でも「ここだけは得意」というものはありますか? 探索が好きとか、工作は早いとか。
『封鎖された人狼村からの脱出』には物語を理解していないと解けない謎があって、松井さんはそういうのはすごく解けますよね。
たしかに、物語に関するものはちょっとだけ得意かもしれない。でも俺、文字を読むのがめっちゃ遅いんですよ。本が読めなくなった理由もそこにあります。だから、問題文を読むのにも時間がかかります。
人狼村で解いていただいた謎も映像でしたね。そういう意味でも松井さんに合ったイベントだったのかな。
原作者は“鬼々迫る戦場”をどう楽しんだのか
『鬼々迫る戦場からの脱出』を遊んだ感想を教えてください。
担当編集ふたりと、弧次郎を演じてくださった声優の日野まりさんと一緒に参加したのですが、途中でキャラクターになりきってセリフを読み合う場面があるんですよね。そこで日野まりさんが実際に弧次郎のセリフを読んでくれて、「なんてお得な体験なんだ!」と思いました。
あと、司会の方の演技が本当に上手で印象に残っています。世界観を崩さずにいろんな説明をしてくれるんですよね。終了後、「一緒に写真撮りたいです」と頼んだら、「ネウロの頃から読んでます」と言ってくれて。一瞬、「あれ、世界観にほころびが」と思ったけど(笑)、ファンの方に演じてもらえるなんてすごくありがたいことですし、嬉しかったです。
リアル脱出ゲーム周辺には、ネウロファンがめちゃ多いんですよ。やっぱり、謎を食っているからかな。
ありがたいですね。今回体験して実感したのですが、リアル脱出ゲームは最近、物語部分にすごく力を入れていますよね。流れがよく考えられていたし、ひとつのドラマとしておもしろかったです。
ありがとうございます。特に今回のディレクターが「物語を丁寧に描きたい!」という考えを持っていたんです。会社としてはディレクターの描きたいものや個性を尊重するようにしているんですけど、逃げ若の世界観を守りながら‟逃若党がその村の戦に加勢する理由”や‟プレイヤーが逃若党の力になるためにはどんな設定が最適か”など、すごく細かく1から考えていましたね。
すごく自然な形ですんなりはまっていましたよね。印象に残っている点でいうと、戦況を盤面で考えていくようなシーンがありますが、あれがまた時行の「逃げ」にバッチリはまっていましたね。自分は全然解けなかったけど、最後の答えまでたどりついて、盤面の上に時行の駒を走らせ、時行の「逃げ」を味わえた人はめちゃくちゃ気持ちよかっただろうな、羨ましいなと思いました。

物語を知っていることで有利になる場面はありましたか?
どうだろう、少なくとも俺は原作者なのにまったく解けませんでした(笑)。キャラクターの能力を深く理解して使ってくださっていたから、原作ファンは嬉しいと思います。でも、ちゃんと全員の能力は提示されていたので物語を知らないとわからない箇所はないし、難易度は変わらないんじゃないでしょうか。
でも、漫画を読んで、アニメを観てから参加した方が絶対楽しいですよね。
それは間違いないですね。俺も本当に逃若党を支える立場として没入できたし、野盗に襲われる村人の恐怖も味わえました。あと、頼重の加護の心強さも。

加藤さんは『鬼々迫る戦場からの脱出』のどんなところがおもしろかったですか?
さっき松井さんが言ってくれたように、戦場が盤面に落とし込まれているところがひとつ。でもそれだけじゃなくて、空間の装飾や、アニメの映像や、撮り下ろしの声や、司会者である村長によって、総合的に『逃げ若』の世界を体感できるようになっていたと思います。ゲームシステムも、戦場の中で鬼が突然攻めてくる、状況が次々と変わる、ということをすごく適切に表現したものでしたね。そこがおもしろかったかな。


逃若党の中から1人だけリアル脱出ゲームに連れていけるとしたら、誰を選びますか?
今回の件で、完全に弧次郎一択になりました(笑)。でも実際、弧次郎がそばにいてくれたら大抵のことは切り抜けられると思います。
誰だろうな……でも、時行が楽しそうにしているところは隣で見たいかもしれない。僕は時行に頼りになるところを見せたいですね。「ここは俺に任せて、逃げてください」って。
人生で一度は言ってみたいセリフですね。
なかなかチャンスがないですね。逆に「ここは任せたから、それじゃ」とは散々言ってきました。

逃若党の中で一番リアル脱出ゲームが得意なのは誰だと思いますか?
軍師である雫か吹雪ですね。今回のイベントだったら、雫と吹雪が問題をどんどん解いていって、玄蕃がふたりには考えつかないひらめきを足すんでしょうね。で、時行と亜也子はそれをポカンと見ているんだろうな。

これから八雲村で時行たちを助ける“村人”たちへ
『逃げ上手の若君』ファンのみなさんには、このイベントのどんなところを楽しんでもらいたいですか?
逃げ若ファンであれば全部楽しめると思いますが、強いて言うなら、まだアニメで出てきていない決め台詞が聞けたり、ボーナストラックのような感じで高師直が長々と喋る声が聞けたりするので、そういうところかな。オリジナル部分もちゃんと原作に沿ってつくられているので、安心して楽しめるはずです。
『逃げ上手の若君』は好きだけどリアル脱出ゲームは初めてという方に、どんな気持ちで参加してほしいですか?
謎を解く達成感だけではなく、物語やキャラクターをより深く理解するためにも来てもらえたらと思います。物語の中に入ることによって見えてくるものってあるから。なんせリアルなんで。キャラクターがいる世界と自分がいる世界が地続きになるし、会場を出ても「いまここに時行がいたらどうするだろう」とふと考えたりすると思います。キャラクターが実際に存在していると感じられる場所として、遊びに来てほしいですね。
最後に、これから八雲村で時行たちを助ける“村人”に向けて、戦場を生き延びるためのアドバイスをお願いします。
「一番簡単な道は選ぶな」でしょうか。SCRAPさんの常套手段(じょうとうしゅだん)なんですが、いかにも正解っぽい道を提示して選ばせておいて、解説パートで「本当にそれでよかったのでしょうか」とどんでん返しをするんですよ。時行のように最後まで諦めず、必ず道が開けるはずだと信じて立ち向かってほしいですね。
700年くらい前に本当にあった物語をテーマにしていますし、「こういうことで悩んでいた人が本当にいたのかもしれないなあ」と思いを馳せながらそれを自分の体で体験できるという事自体が、得難い貴重な体験になると思うので、まずは来ていただいて、謎は解けても解けなくても楽しめるようになっているので、気軽に遊びに来てください。