Mystery for You 危険潜む謎解きキット事件簿
「…リドル探偵事務所、ですよね?実は相談したいことがあって…」
事務所を訪れたのは、最近急上昇を遂げている謎解き会社「SCRAMBLE(スクランブル)」の社長だった。SCRAMBLEは、数多くの人気謎解きキットを制作している会社で、その中でも、毎月自宅に5分〜10分で手軽に楽しめる謎解きキットをいくつかセットにして届けるサービスが人気を博している。
「実は…そのサービスに関して、いくつかの不可解なクレームが届いていまして」と社長はおもむろに話し始めた。
「不可解なクレーム?」私が少し首をかしげると、社長はうなずきながら説明を続けた。
「そうなんです。今月のキットについてなんですが、どうやら解いた人がキットの指示に従った結果、危険な目に遭ったと… しかも、そんな報告が一件ではなく、何件か寄せられているんです。」
驚いた顔で助手が「それ、本当ですか!?」と声を漏らすと、社長は困った顔で視線を落とした。
「正直、私も原因が全く分からないんです。というのも、うちの謎解きは少し特殊で、謎制作や印刷、封入までのほとんどを外部に委託していて、うちはそれをクオリティチェックして、取りまとめて販売しているだけなんです。」
「なので、社長の私でもこのような事態になった理由が掴めないんです。そんな中で、人づてにこの事務所のことを知り、藁にもすがる思いでここを訪ねてきました。」
社長は肩を落とし、先ほど助手が淹れてくれたコーヒーを飲もうとして手を伸ばした。
「あっ」
勢い余って、テーブルに置かれていた助手のスマホを落としてしまったようだ。助手がそれを拾い上げるが、落とした衝撃でスマホにヒビが入り、画面の左側が見えなくなってしまっている。
「大変申し訳ありません!!」
「いえいえ、お気になさらず!」
そんな会話を2人が交わす。久々に助手以外の人と会話らしい会話をしたと思ったら、早速このドタバタだ。何か、面白いことが起きそうな気がしてきた。