Mystery for You 危険潜む謎解きキット事件簿
「何だったんですか、あの社長? スマホも壊されちゃうし…」
社長が急いで帰ったのを見て、助手が頬を膨らませて嘆く。
「やっぱりこの事件、できすぎてますよね? 偶然って、たまたま特殊印刷で水にぬれちゃいけない物質が含まれることなんてあるんですか?」
「無いと言っていいだろう。やはり、この事件はどうも怪しい。今回は、ターゲットも限定的だったわけだし、制作者が特定の誰かを故意に危険に陥れようとしたと見て間違いないだろうね。」
「でも、なんでそんなことしたんでしょうね? 火事が起きてしまったものなんかは、命を落としていてもおかしくないようなレベルですよね。でも、もし殺意を持ってたんだとしたら、こんな不確実な方法取りますか?」
「さくら君は『可能性の殺人』というのを聞いたことがあるか?」
「カノウセイの殺人?」
「ターゲットに殺意を持っているとき、偶然性に頼った『ワナ』を用意して命を狙う殺人のことを、ミステリにおいては可能性の殺人と呼ぶんだ。」
「なんでわざわざそんなことするんですか?」
「命を奪える可能性は下がる一方で、証拠が見つかりづらくなるが故、完全犯罪になることが多いんだ。現に今回の事件においても、仮に殺人事件へと発展していても、この謎解きのクリエイターまで疑いが及ぶ可能性は低いだろう。」
「なるほど… イチかバチかの方法でワナにかけて相手の命を奪うのが、可能性の殺人なんですね。だとしたら…」
「その通りだ。この謎のクリエイターは他にもワナが仕掛けているかもしれない。急いで調査した方が良さそうだね。」
そうして私たちは、先ほど社長が残していった資料から、謎のクリエイターを特定することにした。