Mystery for You コードブレイカー chapter_3 停止しない
私は、手が震えながらも1文字ずつ打ち込んだ
“new adventure”
そして、キーボードのエンターキーを見つめた後、目を閉じて思考をめぐらせた。
「……Aiasは、止めない」
入力した文字を消して、空白の状態で
力強くエンターキーを押し込んだ。
PCのファンが大きな音を上げ、画面にはプログラムコードが高速で流れた。
ハリソンから連絡が入っていたが、私は無視した。
本部に戻ると、そこにハリソンの姿はなかった。
彼には、上層部から重い処分がくだされるのだろうか。
私の居場所も、もうここにはないだろう。
私は自分のデスクに戻り、今回の分析報告書を書きあげた。最後をこのようにまとめた。
「……以上の理由からAiasの停止作戦を中止させた。
今後継続的に、本機関の分析官による動向監視を行なうことにより、安全保障上の問題な しと判断する。」
ハリソンのデスクに報告書を残し、私はCIA本部を後にして、空港へ向かった。
地下鉄で話しかけてきた人物は、おそらくCIAの人物ではない。
しかしハリソンには、私が他のCIA支局から異動してきたのだと伝えられていたのだろう。
一体あの男は何者だったんだ。
ニュースによれば、脚本家、小説家、作家などの関係団体と映画の制作会社、出版社との報酬の取り決めの交渉が成立し、長期にわたっていたストライキが収束したという。AI作家のサービス提供の継続が許可されたことなどが報道されていた。