「やっぱりそうだ。《わたしのすきなひとのこうかいさきほがすむなはにとどけ》が本当のメッセージなら、謎は全部で26問あったはず。そしてそれぞれに謎の記号がついているとしたら、これは、アルファベットに対応しているのね！ 島の名前の下を読めという指示は、先輩が最後にいた島の名前…… Qudiwl…… 」

最後に砂綺帆が導き出したメッセージとは。

《ほねはなはのじもとにまいそう》

「骨は……那覇の、地元に埋葬……」

世界中を旅していた空。しかし最期は、自分のなきがらは自身の生まれ育った地に埋めてほしいと願っていた。本当であれば、この願いは遠い未来のことだったはずなのに、こんなにも早く叶ってしまうというのは本当に皮肉なことだ。
いや、常に危険と隣り合わせの冒険家を選んだ彼は、自分が常に死と隣り合わせであることをわかっていて、この謎を仕込んでメッセージボトルを流していたのかもしれない。
ただ、彼は最後まで生きようとしていた。もちろんそれはまぎれもない事実だ。
再び砂綺帆はひとりで泣き出した。しかしそれは先ほどの遺体を見つけたときの悲しい泣き顔ではなく、どこか安堵した表情だった。

～～～

ある晴れた日の午後。
空の眠るお墓の前にやってきた砂綺帆。

「空先輩、今日はいい天気ですよ」

海が見える高台の墓地には、心地よい風が抜ける。

「私も死んだら、隣に埋めてもらいますからね。この見晴らし、独り占めしちゃダメですよっ」

波の音だけが静かに響く。

「じゃあ、行ってきますね」

きびすを返し、来た道を歩いて海洋研究所へ戻った。

部屋の中からはいつもの楽しそうな声が聞こえる。
今日も海洋研究所には、たくさんの笑顔があふれている。

END