メッセージがわかったとき、ちょうどサーカスが始まった。
兄はピエロとして舞台でアシスタントのようなことをしている。
そうだ、この光景はあのときにそっくりだ。
両親が事故にあった後、塞ぎ込んでいた僕を、兄がサーカスに連れて行ってくれたんだ。
かつて家族4人で行った、楽しい楽しいサーカスに。

サーカスが終わり、人々が退場していく。
兄を見つけるという目的を果たしたのだから僕も帰ろうと立ち上がると、目の前にサーカス団の団長がいた。
僕はなんだかその人に見覚えがある気がした。
「あの…兄は…」
「君たちがまだ子どもだったとき、君のお兄さんが私に頼み込んできたんだ」
兄は退場する人々を見送っている。それを見ながら、団長は言葉を続ける。
「『サーカス団に入れてほしい。ずっと泣いている弟を俺が笑わせたい』って。
でもさすがに子どもを入団させるわけにはいかないからね。
『大人になったらもう一度このサーカスを見つけてごらん』って言ったんだよ」
当時の僕は両親を失った悲しみで、兄がそんな会話をしていたことに気付いていなかった。
「そしたら本当に大人になってまたこのサーカスを見つけて来たんだ！ すごいよ、君のお兄さん」
「…兄を、よろしくお願いします」
「もちろん。君も、またいつでもここにおいで。うちのサーカスがいつどこで開催されるかは謎に包まれているけどね！」
大丈夫、謎解きは得意なんだ。
また、舞台の上の兄に何度でも会いに来よう。

ーfinー