推測通り、オーナーは世田山のコンテナ付近で車を止めた。物陰から監視していると、コンテナの中から絵画を運び出す瞬間を目の当たりにした。

『月光』のインクが確かに浮かび上がったその瞬間、美花が彼の元へと飛び出した。

「オーナー！ いや、窃盗犯！ 私の『月光』を返して!!」

美花の唐突な叫びに、オーナーは驚いた様子でパッと絵画を自分の後ろに隠した。

「な、何で君たちがここに…！」

「オーナー、あなたの発言は矛盾していたんだ。
あなたが本当に夕方自宅に戻っていたとしたら、雨に打たれるはずがなかった。今日、雨が降っていたのはこの周辺だけ。つまりあなたが、この付近で何かを企てているに違いないとにらんだんだ！」

「うっ…」

膝から崩れ落ちるオーナーを前に、一緒にこの場に駆けつけた巡回員が話し始めた。

「昨日の夜、聞いてしまったんだよ。諸用で会場に立ち寄ろうとしたとき、奥の方から聞こえてきたあなた声を…

『500万円で買い取ってくれるんですか!?…』

細かくは聞き取れなかったが、おそらくオーナーが良からぬことを企んでいるのだとわかった。その場で問い詰めることも考えたが、はぐらかされて終わってしまうと思った私は、どうにか証拠を掴むために、みんなに動いてもらおうと考えた。そこで、予告状に扮したメッセージを送りつけたんだよ…」

その後、海斗の通報によって警察が到着し、オーナーは罪を認めて逮捕された。

『月光』は無事展示会場に戻され、翌日の個展は大成功を収めた。

「ふぅ、良かった！ 次の作品には、新聞を使ってみちゃおうかな？」

「アーティストってのはなんでも作品の糧にしちゃうんだな。」

あなたは美花の次の作品を心待ちにするのだった。

ーfinー